私たちの街のGROWING

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第1回:JSCと川崎市が共催した「スポーツインクルージョン縁日」

世界で輝くだけがスポーツじゃない。スポーツは、人と人とが「分かち合う」心を育てる。 2017年1月21日、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下JSC)は神奈川県川崎市との共催によるイベント「スポーツインクルージョン縁日」を開催しました。このイベントはスポーツの力によって地域の活性化を推進する「JAPAN SPORT NETWORK」(JSN)の一事業であり、スポーツ界が社会に果たす役割と可能性を存分に感じさせるものになりました。

JAPAN SPORT NETWORKとは?
互いにスポーツを支え、育てるというスポーツ振興くじ助成制度の理念を尊重するとともに、「スポーツの力」で明日の社会を拓くヒトを育て、活力のある地域社会と幸福で豊かな日本を実現するために協働し、子どもたちや若者が夢を持てる国、輝く未来を創ることを目指したネットワークです。このネットワークには2017年9月現在、全国597団体が「宣言団体」として名乗りを上げています。

川崎市による先行事例

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JSCとともにこのイベントを共催した川崎市は、「障がいは人にあるものではなく、人と人との関係、つまり社会の側にある」という考えのもと、障がい、年齢、人種、LGBT(性的少数者)などさまざまな個性の違いをチャンスとして活かせる社会の実現を目指した取り組みを推進しています。スポーツ関連事業においても、文部科学省から事業委託を受けた川崎市と「NPO法人高津総合型スポーツクラブSELF」との連携によって、障がいのある人とない人がともに楽しめる(障がい者支援ではなく一緒に楽しめる)イベントを通じて、市民の障がいに対する理解を深めることに努めてきました。

JSCと川崎市の新たなチャレンジ「スポーツインクルージョン縁日」

そのような背景を持つ川崎市は2017年、JSCとともに新たなチャレンジを始めました。
障がい者やその家族を含む、これまでスポーツに触れる機会の少なかった市民を対象としたスポーツイベントを企画・実施。それが、1月21日に市内の高津スポーツセンターにて開催された「スポーツインクルージョン縁日」です。
「インクルージョン」とは多様な個性を一つの輪の中に含み、それらの個性を生かす社会を作り上げる考え方です。「スポーツインクルージョン」とは、スポーツの力によってそのような社会の実現を目指す取り組みを意味します。

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「スポーツインクルージョン縁日」の画期的な特徴は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、その名のとおりお祭りの縁日のような雰囲気のもと、運動・スポーツの楽しさや気持ち良さに触れられること。体育館に設けられた「スポーツ縁日エリア」では、参加者が誰でも気軽にチャレンジできるボッチャ(自分のボールを投げたり転がしたりして的=目標球に近づける競技)や輪投げ、トランポリン、卓球バレー(卓球台の自陣3辺を囲むように1チーム6人が着席し、音のなるボールを木のヘラで打ち転がしてラリーする競技)などを楽しみました。また「パラスポーツ体験エリア」では、パラリンピック正式競技であるゴールボール(目隠しをしながら鈴の入ったボールを転がし、ゴールに入れる競技)の体験会も複数回開催しました。

2つ目の特徴は、障がいのある人もない人も分け隔てなく互いに協力し合い理解し合えるように、運営体制を含めてイベント全体が設計されたことです。
例えば卓球バレーは、椅子に座ったプレーヤーがボールを台の上で転がすゲームであるため、障がいの有無や年齢、性別の違いによってプレーの質に差が生まれにくくなっています。このように、ルールや道具を工夫することで「障がい者向け」ではなく「誰もが一緒にチームになれる」ゲームを、参加した人全員が一体となって楽しみました。

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また体育館の同じフロア内に、スポーツや健康などをテーマにした教養講座や、ピラティス教室などのコーナーも設けられました。これにより、日頃スポーツや運動に接する機会の少ない保護者たちにもスポーツを身近に感じていただくと同時に、スポーツの振興を図ることがインクルージョン社会の実現につながるという考えにも共感していただくことができました。

3つ目は、運営を支えるボランティアにも障がい者が参加したことです。「健常者=支える人、障がい者=支えられる人」という固定化されたイメージで人を分けるのではなく、障がいのある方も地域の一員としてボランティアに参加することで「支える」という役割とその喜びを、身をもって知り、また支えてもらった小さな子ども(健常者)にとっては「ボランティアのお兄さんお姉さん」を健常者・障がい者と区別することなく接することができました。

Interview

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川崎市市民文化局市民文化振興室担当課長
(文化創造推進) 山本 武 氏

—スポーツインクルージョン縁日を実施するにあたり、川崎市としてはどのような課題に取り組もうという意図があったのでしょうか?

川崎市では「かわさきパラムーブメント」という取り組みを進めています。この取り組みは2020東京パラリンピックの開催を絶好の契機と捉えスポーツの力を活用することで、市民の方々の「心のバリアフリー」を醸成して、誰もが暮らしやすいまちづくりにつなげることなどを目的としています。2020年を一つの契機とし、2024年に迎える市制100周年に向けて、しっかりとその取り組みを生かしていきたいと考えています。

—体育館内に教養講座のコーナーを設けるなど、スポーツイベントと銘打っている催しとしてはユニークな試みもあり、日頃スポーツに親しむ機会が少ない方たちにもイベントを楽しむ仕掛けになっていると感じました。

こうしたイベントでは「 スポーツをやって楽しむ」に偏りがちになりますが、来場者には様々な方々がいらっしゃいます。企画会議ではその点を踏まえ、JSCをはじめ高津総合型スポーツクラブSELFからアイディアをご提案いただいたことで、スポーツイベントをきっかけに様々な人がインクルージョンという考えを共有することができました。

—トップアスリートに限らず、一般の市民の方、特に日頃スポーツや運動に馴染みのない方を取り込むことは、市の課題解決にどうつながっていくのでしょうか。

他の自治体と同様に川崎市も超高齢社会に向かっており、医療介護の経費が増加傾向にある中、財政負担への対応が課題となっています。様々な行政ニーズに柔軟に対応していくためには、こうした傾向を抑制していくことが必要です。そのため、市民の方々には、日頃から健康づくりへの関心を高めていただき、健康寿命を延ばしていけるような活動を積極的に行っていただきたいと考えています。
スポーツや運動に親しんでいただくことは、市民の健康づくりにとって非常に有意義なことだと考えています。一例を挙げますと、川崎市は「介護予防かわさき体操」というオリジナルの体操を作成し、CDやDVD、リーフレットを活用して普及、拡散に努めています。

—スポーツインクルージョン縁日には、地域経済の活性化という狙いもあったそうですが。

スポーツインクルージョン縁日は、高津区(人口23万人規模)で行なったイベントであり、市全域への大きな波及効果には至っていないように感じています。今後は、参考にできる事例として、市内では地域の商店街と連携し、参加者に地域の商店街のクーポンを配って地域経済の活性化につなげるといった取り組みも行っておりますので、様々なスポーツイベントにも取り入れていけるのではないかと考えています。

Interview

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NPO法人高津総合型スポーツクラブSELF
クラブマネジャー 菊地 正 氏

—川崎市とともにスポーツインクルージョン縁日を運営することになった経緯は?

私どもは総合型地域スポーツクラブとして約13年の歴史がございます。3年ぐらい前から障がい者スポーツの教室事業をスタートしました。ほぼ同時期に、「地域における障害者スポーツの普及促進事業」をスポーツ庁から受託することになり、「かわさきインクルージョンモデル」としてさまざまな事業を展開しております。
スポーツインクルージョン縁日という題目で過去にもイベントを開催したことがありますが、今回(2017年1月)はJSCさんと川崎市さんの共催となり、トップアスリートもお招きして開催しようというお話をいただいたものですから、ちょうど我々が国と取り組んでいる事業のテーマとばっちり噛み合ったものでもあったため、ぜひ関わりたいということで運営に至りました。

—スポーツの振興を図ることが、インクルージョン社会の実現にどのように繋がっていくとお考えでしょうか?

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そもそも日本では、スポーツといえば学校体育。でも私は学校体育と、一人ひとりが楽しんで活動するスポーツとの間にギャップを感じております。学校体育のやり方ではどうしても、子どもによって得意・不得意の差が目立ってしまい、そのために体を動かすこと自体への関心が低下し、子どもの体力低下というところにもつながっていると考えています。
我々のクラブの会員のうち、障がいのある方というのは知的・精神障がいの方がほとんどです。知的障がいの子や保護者の方からは、学校の体育の授業だけではなかなか味わうことのできない、スポーツで「楽しい」時間を過ごしたいというニーズがあると我々は感じています。
また我々は、障がいのある方たちが特別支援学校、養護学校を卒業した後のスポーツ活動の場づくりを意識しています。卒業と同時に、彼らはスポーツ活動をする場がなくなってしまいます。そして肥満になったり、精神的に引きこもってしまったり、犯罪に結びついたり…。そういうところに大きな問題があると私は捉えています。卒業した子たちを我々のクラブが積極的に受け入れ、将来に向けて心身ともに健康になっていく場を作っていきたいと考えています。

—スポーツインクルージョン縁日を開催したことで、どのような成果がありましたか?

たくさんあります。開催目的でもありましたが、参加者だけでなく、一般市民の方にもスポーツの振興を通じてインクルージョンの意識づけを促進できたことが一番の成果ではないかと思います。地域の方一人ひとりが障がい者を怖がらない、嫌がらない。そのバリアをなくしてあげられればと思っていますので、その意味では非常に効果あるイベントだと思っています。

—JSCやJSNの取り組みについて、お考えのところがあればお願いします。

日本のスポーツ環境は、特に財源という面において欧米から遅れているというか、恵まれていないところがあると長年感じておりまして、やはり学校体育とスポーツとの間に壁、ギャップがあることも影響し、スポーツで稼ぐことが良くないことのように思われているところがあると思います。
そのような環境下で、ボランティアベースで運営されてきた地域のスポーツクラブにとって、スポーツ振興くじ助成金を活用させていただける現在の仕組みはとてもありがたいです。全国の地域スポーツクラブは、2020東京オリンピック・パラリンピックのサポートなどを一生懸命考えています。2020年に向けて、またその先の未来に向けて、JSCさんとともに、より良いスポーツ界を作っていきたいと思います。

JSCの事業の一つであるJSN(JAPAN SPORT NETWORK)は、ネットワークに参加する仲間がお互いに持つ強み・情報・ノウハウをシェアしながらスポーツの推進のために連携・協働しています。JSNはスポーツを支え、育て、子どもたちや若者が夢を持てる国、輝く未来を作ることを目指して、これからも活動を続けていきます。

アンケートにご協力ください。

Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

とても理解できた
なんとなく理解できた
理解できなかった
Q2

スポーツくじ(toto・BIG)の取り組みに共感できましたか?

とても共感できた
なんとなく共感できた
共感できなかった
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