私たちの街のGROWING

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第2回:名寄市 スポーツを街づくりの中心に

スポーツの力が地域の活性化に寄与することにいち早く気づき、様々なスポーツ振興を実践している北海道名寄市の先進的な取り組みを紹介します。
「スポーツの振興は街づくりそのもの、より多くの市民にスポーツの裾野を広げる」
街の将来を考え続ける北海道名寄市の加藤剛士市長は、名寄という街の資源を十分に活かし、子どもたちにとってはより良い将来につながる経験を得るために、市民にとってはこの街でより良い暮らしを営み、生きることのアイデンティティーを育むために、「スポーツの力を取り入れた街づくり」を進めています。

スポーツを街づくりの中心に

2017年9月17日。秋晴れの週末となったこの日、北海道名寄市の人々は駅前の目抜き通りに詰め掛けました。そして、ローラースキーを履いた若者たちが交差点の角を膨らむように姿を現し、風を起こしながら商店街を駆け抜けていきます。沿道に集まった市民は、この若者たちに大きな拍手と声援を送り続けました。

名寄市は北海道北部の内陸に位置する小さな街です。夏冬の寒暖差が約60℃という自然環境にあり、人々は長い冬を雪とともに暮らしています。人口は27,957人(2017年11月現在)で、その約3分の1を65歳以上の高齢者が占めています。名寄市は、「人口減少」と「少子高齢化」などの地域の課題に向き合いながら、あらためて地域の強み・弱みを見つめ直し、持続可能な街づくりについて考えました。議論の過程を、加藤剛士市長は次のように振り返ります。

「2015年に『名寄市 まち・ひと・しごと創生総合戦略』を策定するにあたり、より多くの課題に対応できる特定の分野に集中して投資していくことを考えました。山頂が高いほど裾野も広がるように、政策も尖らせることによって幅広く市民のためになると考えられるからです。そうして議論を進めていく中で、大きく浮かび上がったものの一つが『ウインタースポーツ』でした」(加藤市長/以下、引用コメントはすべて同氏)

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かねてより名寄市は、各種ウインタースポーツの大会や合宿の誘致に熱心に取り組んでいます。近年は地球温暖化の影響からか、本州のウインタースポーツ会場は雪不足により大会が開催できない事態が発生したことがありました。名寄市は急遽、開催予定都市からの依頼を受け、代替で大会を開催しその役割を見事に果たしています。

過酷な自然環境を、他地域にはない強みに。名寄市の資源と言えば、加藤市長が「雪質日本一」と自負する天然のパウダースノーです。そして市内にはスキー(アルペン、ノルディック、ジャンプ)、スノーボード、カーリングなどの充実した競技施設と、大会運営ノウハウを持った人材がいます。「まちづくり」をテーマに話し合う中で、名寄市の強みが改めてクローズアップされていきました。

「もう一段ギアをあげてウインタースポーツに取り組もうということになりました。つまりスポーツを、競技に関わる限られた市民だけのものにしてはいけない。スポーツが文化として、本当に(幅広く)市民のものにならなければいけない」

こうして市は構想をさらに発展させていきます。幾度の話し合いを経て、様々なスポーツ政策を実行してきた加藤市長は、今や確信を持ってこう言います。

「名寄市にとって、スポーツ政策は『まちづくりそのもの』なのです」

スポーツが、人づくりの基礎を培う

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加藤市長はまず、将来の名寄市を担っていく地域の子どもたちに目を向けました。北海道の子どもたちは「雪国だから足腰が強いだろう」とイメージされがちですが、現在の社会環境のなかでは、外に出ることも少なくなり、決して基礎体力が高いとは言えないそうです。四季を通じて自然の変化に触れ合い、冬場は放っておいても雪の野原を駆け回っていたというのは一昔前のこと。現在の名寄市の子どもたちは、自然に触れながらこれに向き合う機会が減少していると加藤市長は感じていました。

「子どもたちには、(厳しい自然に囲まれ、少子高齢化も進む)この地域で生き抜き、より良く生活するための基礎体力を身につけてもらいたい。このような環境のなかであっても、選択肢のある多様な経験をさせたいという願いから、この名寄の資源を生かしたフィールドを提供したい」

「屋外で行うウインタースポーツは、この地域ならではのアイデンティティーを生み、育てることができる。ウインタースポーツに触れる機会というのは単にスポーツを楽しむだけでなく、自然というフィールドの中で寒さや雪と向き合い、より良い生活を営むための基礎を習得する点で、人を育てることにつながる」

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地域の子どもたちの「生きる力」を育む。その狙いを実行に移した施策として、①学校の体育授業への支援、②スポーツ少年団へのトレーニングやスポーツ科学サポートの支援、③地域指導者の養成であり、これらを通じて、名寄市の児童や生徒、ジュニアアスリートの育成に取り組んでいます。学校教育とスポーツ振興分野との垣根を低く再設定したことで、子どもたちがスポーツを通じ、指導者や地域の大人などと学校以外の場において関わる機会を創出しています。これは子どもたちの人間性を育む上で非常に重要なことだと加藤市長は語っています。また専門的なスキルを持つ指導者は、子どもたちだけでなく学校の教員に対しても手厚く指導を行なっています。地域の大人たちも、子どもたちを育む貴重な人的資源だからです。

「子どもたちが地域の大人の愛情、地域愛の中で育ち成長した先に、名寄の思い出や名寄への関心・貢献を抱いてもらえたらと思う」

一方で高齢者に目を向けると、従来この地域ではノルディックスキー(歩くスキー)が盛んだったことから、今でも生涯スポーツとして多くの方がノルディックスキーを楽しんでいます。そこで市は、積雪のない時期の地域行事としてノルディックウォーキングを定期的に開催し、高齢者への健康維持・増進を進めるうえで、スポーツをする機会を創出しています。体育の日のイベントには、約200人の市民が参加しました。
また、同様に、市民が参加するスポーツイベントとして、2016年度と2017年度には「有森裕子なよろひまわりリレーラン」「なよろ憲法記念ハーフマラソン大会」の両大会を、スポーツ振興くじ助成金(地方公共団体スポーツ活動助成)を受けて開催しました。
さらに一風変わった取り組みとして、名寄市は地方自治体・日本スポーツ振興センター(以下、JSC)・エアウィーヴ社が共同で取り組む健康増進プロジェクト「アクティブ・フォー・スリープ」に、JAPAN SPORT NETWORKの加盟団体として参画し、住民へスポーツに参加する意識を促進し、日常生活に運動を取り入れ習慣化するためのきっかけ作りなども行っています。
こうした年間を通じてスポーツイベント等を開催していくことが、市民の健康維持・増進にもつながると、加藤市長は期待しています。

ウインタースポーツのアスリートが集まる街へ

市民がスポーツを「する」機会の創出に加えて、スポーツイベントの運営に携わることにより、アスリートを間近で「見る」「支える」という体験づくりにも、名寄市は積極的に行っています。

名寄市は2016年よりJSCと北海道が連携して取り組む「ウインターコンソーシアム事業」の実施拠点となったことで、2026年の冬季オリンピック・パラリンピックを見据え、次世代のアスリートの発掘・育成を目指すプロジェクトを開始しました。冒頭のローラースキーによるタイムトライアルは道外からのエントリーを含む小中高生を対象に行われたもので、才能を見出された若者たちは11月、大いなる夢を描いて海外合宿(フィンランド)へと派遣されました。

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競技会も表彰式も商店街でやってしまおうというアイディアにも、市民がアスリートを間近に見て支えることで「市民にスポーツの裾野を広げたい」という意図が反映されています。

「このローラースキー競技会をはじめ、商店街を活用することで多くのボランティアや市民の(スポーツに対する)注目度が変わった。スキー場に足を運ばなくても、活躍するアスリートや地域の子どもたちを見る機会ができた。これが市民から湧き上がる『応援しよう』という気持ちの原点になっているように思う」

「ウインタースポーツコンソーシアム事業」の実施拠点となった初年度から、早くも波及効果が現れ始めました。合宿に参加した市外の中学生が名寄市内の高校に進学を決め、トレーニングの専門家が名寄市の取り組みに共感し、自ら希望して市の職員となったケースもありました。このような「スポーツの力」による波及効果はさらに、もともと住んでいる地域の人々の心にももたらされるようになっています。

スポーツによって市民の一体感を醸成

「ジュニア世代の子どもたちの活躍は、市民にも大きな影響を与えると考えている。今年(2017年)はバイアスロン(クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた2種競技)のジュニアアスリート2名が名寄市内の高校に入学しました。彼らを指導する地域のバイアスロンコーチを行政がサポートすることで、ジュニアアスリートの育成を行っています。こうした選手が地域にいることが、(もともと地域で生活している)子どもたちのモチベーションの向上にもつながっている」

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2017年8月に市内で開催されたスキージャンプの「名寄サンピラー国体記念サマージャンプ大会」は、例年を上回る数多くの来場者を迎え入れました。前身となった「名寄ピヤシリサマージャンプ大会」から数えて23年目にして、市民からかつてない高い関心を得たのも、「スポーツの力」により名寄市民の一体感を醸成した賜物と言えます。

「(サマージャンプ大会の来場者は)市外からの来訪も含めてではあるが、市民の『応援しよう』『見てみよう』という意識が会場に足を運ぶ動機になったのではないかと思う。少しずつではあるが(市民一人ひとりがスポーツに寄り添う)気運の高まりが見え始めている」

世界での活躍を期待される有望なアスリートが名寄市にやって来ることで、そのアスリートは世界での活躍を目指す地域の若者のよきロールモデルとなっています。また夢に向かって努力を重ねる若者を応援しようという気持ちが多くの市民に芽生え、大会ボランティアなどによる社会参加意識につながり、そして地域に新たな人と人のつながりを生んでいます。

スポーツによる街づくりの未来

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少子高齢化、人口減少、過酷な自然環境など、名寄市の抱える課題は他の地方自治体と重なる部分が多く、スポーツを街づくりの中心に据えて歩む名寄市の政策は、多くの地域にとって貴重なヒントとなるでしょう。

様々なスポーツ施策を推進する加藤市長は、名寄市の未来、地方の未来について、示唆に富んだ言葉を口にしました。

「多様な機会を市民に提供していくことは、行政の使命。(転出者を食い止めたり転入者を増やしたりといった)『定住』を求めるだけでなく、来訪者も含めて名寄にかかわる『関係人口』を増やしていくことが、何が起こるかわからないこれからの時代において、実は意外と重要な視点なのではないでしょうか。」

スポーツくじ(toto・BIG)は、名寄市のように「スポーツの力」で地域を活性化する取り組みを、さまざまな助成事業を通じてサポートしています。

アンケートにご協力ください。

Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

とても理解できた
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スポーツくじ(toto・BIG)の取り組みに共感できましたか?

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