インタビュー

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インタビュー

毎日のごはんが、強い自分をつくる。 パラ陸上 辻沙絵×料理家 栗原心平

小学生の頃からトップクラスのハンドボールプレーヤーだった辻選手。大学2年生の時に陸上に転向し、わずか1年半足らずで、リオデジャネイロ・パラリンピックで銅メダルを獲得しました。彼女のパワーの源は、なんといってもお母さんの手料理。そこで、子どものころから辻選手が大好きなメニューを、料理家の栗原心平さんが心平流にアレンジを加えつつ再現。一緒にキッチンに立ちながら、栗原さんがトップアスリートの食への向き合い方について辻選手に話をうかがいました。
パラ陸上 辻選手に料理家 栗原さんが贈った料理レシピはこちら>>

きんぴらごぼう篇

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煮込みハンバーグ篇

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チキンサラダ篇

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おいしい対談編

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おいしくてバランスがよい、お母さんの手料理

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栗原 今日は辻沙絵さんのリクエストで、お母さまのお料理の中で特にお好きだという3品、「きんぴらごぼう」「煮込みハンバーグ」「チキンサラダ」を作っていきたいと思います。

 よろしくお願いします。アスリートは体が元気じゃないと戦えないので、食事はとても大事です。今日は楽しみにしてきました。

栗原 よろしくお願いします。ところで辻さんは、お母さまのお料理のどんなところがお好きですか?

 まず、バランスよく出してくれたことですね。例えば今日はお魚、明日はお肉、あさってはお魚という順番で。

栗原 なるほど。それは辻さんがスポーツをされていたからでしょうか?

 スポーツをやっているからというよりは健康のために、私たち子ども(3人姉弟)が小さい頃から、栄養が偏らないようにと母は意識していたと思います。おやつもスナック菓子を出されたことがなくて、手作りのケーキとかクッキーとか。

栗原 手作りのケーキ!素晴らしいですね。

 はい。いま考えたらすごい手間をかけてくれていたなって思います。

栗原 料理ってそういう気持ちが伝わるのが素晴らしいところですよね。

 あとは冷めても美味しいんですよ、うちの母のごはんは。

栗原 ベースの味付けがしっかりしているってことですね。

1日5食、アスリートの食生活

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栗原 辻さんはアスリートであり大学院生でもあるわけですが、1日の生活サイクルはどんな感じですか?

 最近は朝7時から練習して、それから研究室へ行って、夕方からまた練習です。練習が終わるのは夜の8時半とか9時ぐらいですね。

栗原 きっとお腹減りますね。

 減ります、減ります。だから食事は1日5回です。

栗原 5回!?

 朝・晩が寮の食事で、昼が学食、これで3食。その間に補食を入れて1日5回です。補食ではおにぎりとかを食べていて、夕食の後は何も食べません。

栗原 ご自身では、普段お料理されるんですか?

 少しします。寮で食事して、足りないものとかは自分で。それが週に2〜3回ぐらいですね。

栗原 足りないっていうのは栄養素としてですか? それとも量がもの足りない?

 栄養素として、ですね。選手として私はまだまだ体が細いので、お尻周りやハムストリング(太ももの裏側)など、エンジンになる部分の筋肉をもう少しつけたいと思っています。ですからウエイトトレーニングとか、ウエイト終わった後に瞬発系のトレーニングを入れたりして「走れる筋肉」を作っている段階なんです。ウエイトトレーニングをやった日ならば、筋肉の元となるタンパク質を多めに摂るように心がけているので、そういう時は鶏ササミの料理を作ったりしていますね。

栗原 寮のご飯もおかわりしちゃう感じですか?

 ものによっては、ですね。でもあんまり……腹八分目にしています。カロリー計算もしているので。

栗原 ご自身で?

 はい。1日の総摂取カロリーが2400〜3000kcalになるように、アプリで計算して自分で調整しています。

海外遠征とスポーツくじ助成

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栗原 試合が近くなったら、食事の摂り方も変えるんですか?

 試合の前日はお肉を控えます。摂ると体が重たく感じちゃうんですよ。やっぱり体が軽いと感じながら走れたほうがいいので、お肉をやめて、エネルギーになるご飯(お米)などの糖質をしっかり食べます。

栗原 なんかね、「よし明日は試合だ、ステーキだ」みたいなイメージありましたけどね。

 あっ、よく言いますよね、カツ丼とか。でもそれ、実はあんまりよくないっていう……

栗原 よくなかったんですね。それから遠征も多いと思いますけど、海外での食事では苦労されることないですか?

 私は合わなくて……。基本的にホテルとか選手村みたいなところで生活するんですけど、お米、味噌汁、梅干しは必ず持参して、ご飯は監督に炊いてもらっています。それと海外では基本、生野菜は食べません。それからお水も気をつけないと。

栗原 確かにそうですね。では、そんな海外遠征に行く機会も多い辻さんにとって、スポーツくじ(toto・BIG)の助成などの支援は、役に立っているでしょうか?

 大変、役に立っています。やっぱり海外へ行くとなると遠征費がかかりますし、大事な大会にはコーチに帯同してもらいたいとなると、やはりその分お金が必要です。さらにパラ・アスリートの場合は、義足や義手を買ったり修理したりする費用もかかります。スポーツ用の義肢って保険適用外なので、選手の実費負担なんですよ。

栗原 ええー、そうなんですか。

 義足なら100万円ぐらい、私がつけている陸上競技用の義手も40万円ぐらいします。ですからスポーツくじの助成などの支援は本当にありがたく、有効に活用させていただいています。

いつでも負けたくない性格

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栗原 辻さんはどうしてアスリートを目指すようになったんですか?

 うーん、なんだろう……。小学校5年生からずっとハンドボールをやっていて、ただ単に強くなりたい、上手くなりたい、の一心でここまで来ちゃいましたって感じです。

栗原 気づいたらもう、そういう環境にいたという感じですか。なるほど。小さい頃から常に「勝負」を意識する性格だったんでしょうか?

 はい。なんでも負けたくないんです。私には姉と弟がいるんですが、ご飯を食べるだけでも意地を張ったり、「早く出かけよう」って言われたら急いで支度して私だけ忘れ物をしたり。

栗原 すごいですねー、僕なんか姉に負けっぱなしですけどね。辻さんって、見た感じはそんなに強そうに見えないですけどね。

 本当ですか? すごく負けたくないです。今でも普通に道を歩いている時、前を歩く人がいたら「あ、負けたくないな」って追い越しちゃうんですよ。

栗原 そんなに……

 心平さんは、どうして料理を始めたんですか?

栗原 家庭環境ですよね。うちには食材がありましたし。本格的に料理をしたという記憶があるのは、小学校2年生ぐらいからだと思うんですけれど。

 2年生!?

栗原 ええ。両親の土日の朝ごはんとか……。最初はコンビーフとキャベツの炒め物とかでしたけど、いつの間にか作ることが習慣づいちゃったんですよね。すると当然、親も甘えて。「もうお前の役目だろ」ってことになるじゃないですか。

 あはははは。

リオの雰囲気は温かく、エキサイティング

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栗原 では、さっそく召し上がっていただきます。

 いただきます。

栗原 どうですか?

 めちゃ美味しいです……! お母さんの(料理)と似てます。ハンバーグのこの重さがない感じとか。

栗原 そうですね、あんまり重くないですよね。

 なんか、実家に帰ったなって思いました。

栗原 最高の褒め言葉です。ありがとうございます。

 本当にすごく美味しい、幸せです。

栗原 そういえば、リオデジャネイロ・パラリンピックの会場の雰囲気って、どんな感じでしたか?

 とにかくすごかったです。歓声が大きくて、レース前には自分の心臓の音以外何も聞こえませんでした。

栗原 ええー、本当ですか。

 はい。これ本当にスターターの音聞こえるのかなって不安になるぐらい。それにブラジルは日本とつながりのある国なので、日本語で「頑張れー」とか言ってくださる方もいて。雰囲気は温かく、そしてエキサイティングでした。

栗原 ほかの試合とは全然違う感じですか?

 はい。今のところ日本で同じ雰囲気を味わったことはないです。やっぱりブラジルの方ってとても陽気で、音楽が流れると踊ったり、ビール片手に楽しく観戦したりっていう感じでした。日本ではまだパラ・スポーツがマイナーで、見て楽しむ大会にはなっていないからなのか、観客の方たちにも行儀よく静かに見なきゃいけないっていう気持ちがあるようですね。もっと楽しく、もっと熱く、パラ・スポーツを楽しんでいただけるように、私は頑張ろうと思っています。

栗原 そのリオで銅メダル(陸上女子400m・T47クラス)を獲ったことで、周りの環境に変化はありましたか?

 変わりましたね。リオから帰国したら空港でも駅でも街中でも「辻ちゃん!」「お疲れ様」「おめでとう」「次も頑張ってね」って、いろんな声をかけていただくようになりました。自分のしたことでこんなに「感動した」とか「見方が変わった」っていうような声を聞けて、私もやってよかったなって思います。実際、試合の前はすごく逃げたい気持ちになるんですけど、逃げずに戦ってよかったなって。

あの空間を支配できる、金メダリストになりたい

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栗原 2020年、東京パラリンピックに向けての意気込みを聞かせてください。

 選手としては金メダルが目標です。リオの表彰台に立った時、隣の人が金メダルをもらっている姿を見たら、やっぱりいいなあって思いました。国旗が上がって国歌が流れる。あの場所、あの空間を支配できる金メダリストってかっこいいなあって。その金メダルのために、毎日食事やトレーニングなど全部を積み重ねていけたらなあって思っています。そしてもう一つ、東京パラリンピックをアスリートだけじゃなく、観客やサポーターのみなさん全員が「楽しかった」と感じられる大会にできたらなあって思いますし、パラリンピック開催をきっかけに共生社会の実現に向けて、自分もできることを精一杯やっていきたいと思っています。

栗原 なるほど。

 栗原さんは、2020年の目標はありますか?

栗原 (ムチャ振りに驚く)2020年? えーなんでしょうね……ますます料理に磨きをかけて、何かしらお力になれることがあれば、お力になりたいなと思います。ぜひうちの会社も、調理器具とお皿で辻さんをスポンサードさせていただきたいなと。

 ぜひ! 遠征先によってご飯も全然違いますので、とても心強いです。私の味の好みをバッチリつかんでいただいた心平さんに、シェフとして大会に帯同していただきたいぐらいです。ふふっ。

栗原 機会がありましたら、お供したいと思います。本当に頑張ってください。

 はい。今日は美味しいお食事をありがとうございました。

栗原 ありがとうございます。

 ごちそうさまでした。

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辻 沙絵つじ さえ

1994年10月28日、北海道七飯町出身。生まれつき右腕のひじから先がない先天性前腕欠損。10歳の時にハンドボールを始め、ハンドボールの強豪、茨城県立水海道第二高に進学、全国高校総体ベスト8。2013年にスポーツ推薦で日本体育大学に入学。ハンドボール部に入部したが、大学2年の夏、体力測定で瞬発力の高さから、陸上競技部パラアスリートブロックへの転向を打診される。2015年、国際大会初出場となったカタールのパラ陸上世界選手権の女子100mで6位に入賞。2016年日本パラ陸上競技選手権で100m、200m、400mの3冠を達成。100mでは12秒86の日本新記録を樹立。2016年パラリンピックリオ大会陸上女子400m(T47)で銅メダル、2017年世界パラ陸上競技選手権女子400 m(T47)で銅メダル。東京2020大会でメダル獲得を狙う。

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栗原 心平くりはら しんぺい

料理家 栗原はるみさんの長男。 (株)ゆとりの空間の代表取締役専務として会社の経営に携わる一方、幼い頃から得意だった料理の腕を活かし、自身も料理家としてテレビや雑誌などを中心に活躍。仕事で訪れる全国各地のおいしい料理やお酒をヒントに、ごはんのおかずやおつまみにもなるレシピを提案している。2012年8月より料理番組『男子ごはん』(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。
『栗原心平のとっておき「パパごはん」』(2017年 講談社)、『男子ごはんの本 その9』(2017年 KADOKAWA)を始め著書多数。数多くのテレビ、Webサイト、雑誌に料理紹介、インタビューで出演。

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