インタビュー

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インタビュー

心技体をひとつに、繊細に、力強く。日本人ならではの美しい形を極める。

2020年東京オリンピックで、実施競技に追加された空手。空手には、2人の選手が決められた部位に攻撃を打ち込む「組手」、相手の動きを想定して一人で演武を行う「形(かた)」の2種目があります。形の競技で世界のトップに立つ清水希容選手の指導のもと、元シンクロナイズドスイミング日本代表の青木愛さんが演武にチャレンジ。空手の魅力を体感するべく、ぜひ皆さんも映像を見ながらチャレンジしてみてください!


体験編

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インタビュー編

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形が追究するものは「心技体の一致性」

青木 今日は清水選手に空手の「形(かた)」を教えていただけるということなのですが、そもそも形とはどういう競技なんですか?

清水 空手には「組手」と「形」の2種目あります。組手は2人の選手による1対1の対戦競技で、形は仮想の敵に対する攻撃技と防御技を一連の流れとして組み合わせた演武のことです。試合の進め方は、組手も形もトーナメント形式が一般的です。形の場合、約3分で構成される形を1人ずつ演武して、その出来栄えを5人の審判が判定して勝者を決めます。

青木 試合で演武する形は決まっているのでしょうか?

清水 形の種類はたくさんありますが、それぞれ構成は決まっていて、選手が創作することはできません。試合でどの形を打つかは、形リストの中から自分で選びますが、一つの大会で1回戦2回戦と勝ち上がっていく過程で、同じ形は使えません。ですから自分の得意な形を決勝まで残しておくのか、それとも強い相手と当たった時に使うのかなどの戦略も重要です。私は何回戦でどの形を使うか、どの相手にどの形を当てるか、ということを考えながら選んでいますし、対戦相手も当然、私がどの形を選ぶかを読んできます。

青木 どのような基準で採点されるんですか?

清水 技一つひとつの意味や、形の持つ意味などを正しく表現することが求められます。具体的には正確性、力強さ、スピード、キレや迫力などが採点(ポイント化)されます。そのほか、流派の特徴を正しく表現できているかなども採点の基準になります。空手にはさまざまな流派がありますが、私の流派は「糸東流(しとうりゅう)」で、速さとキレが特徴です。

青木 形とはそもそも何を追究しているものなのでしょうか?

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清水 なかなか簡単には言えないですが、あえて挙げるとすれば「心技体の一致性」だと思います。一つひとつの形、それぞれに意味があり、また形を構成する一つひとつの技にも意味があります。その意味を表現するには、心技体にズレがあってはいけないと思っています。

青木 心技体の一致性。

清水 はい。やっぱり、かたちだけでは表面的になってしまいます。目の前に本当に相手がいると想像して、速さや力強さなどを表現することが大事かなと思います。

青木 演武の始めに大きな声を出していますが、これにはどんな意味があるのですか?

清水 これから自分が打つ形の名前を宣言しています。今回挑戦していただくのは、「チャタンヤラ・クーシャンクー」という名前で、私の流派「糸東流」の中で最も難易度の高い形です。

青木 えっ。なんでそんなに難しい形を選んだんですか!?

清水 私が最も得意としている形なので。

青木 では、私にできる範囲で(笑)、お願いします。

――そして、清水選手の丁寧な指導のもと、青木さんが最も難易度の高い形の一つという「チャタンヤラ・クーシャンクー」の一部にチャレンジ。最後は2人そろって演武しています。ぜひ映像でご覧ください。

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――体験を終えて、改めて青木さんが清水選手にお話を伺いました。

青木 私の演武はどうだったでしょうか?

清水 きれいでした。この短時間で、あれだけきれいに速く動ける人はなかなかいないと思います。特に腰が上手に使えていて、上半身と下半身がバラバラにならず、すごく連動していましたね。

青木 ありがとうございます。とても難しかったです。

オリンピック代表選考はすでに始まっている

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青木 ところで、清水選手が空手を始めたのはどんなことがきっかけだったのですか?

清水 きっかけは、兄が通っていた道場に遊びに行って、先輩方が形をやっている姿を見たことです。その道場は女性が多くて。空手は男性がやるものというイメージが私の中に強くあったのですけれど、その道場で女性の先輩たちの姿に憧れて、「やってみたい」と自分から言いました。

青木 空手は2020年のオリンピック競技になりました。

清水 今までオリンピックといえば、他競技の選手たちの頑張る姿を遠くから見る、という感じでした。でも2020年は自分もその舞台に立てるかもしれない、自分は近い位置にいるんだ、ということで気持ちが変わりました。オリンピック競技種目になったことで、空手界が今まで以上に注目を浴びている、ということも実感しています。その分しっかりとやっていかなければという責任も、強く感じるようになりました。

青木 オリンピックの代表選考はどのように行われるのですか?

清水 2018年1月末から始まっています。オリンピックに出場できるのは、組手(男女各3階級)と形(男女)の各10人で、世界ランキングを基準に選ばれることになりました。2018~2020年に開催される世界選手権や大陸選手権など、世界空手連盟(WKF)の公式大会で積み上げたポイントが世界ランキングに反映されるので、大会に出続けなければなりません。選考レースは2020年の4月ぐらいまで続きます。

青木 まったく気が抜けないですね。

清水 ずっと走るしかないな、って感じです!

「日本人らしさ」で海外の選手に勝つ

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青木 海外の選手たちと競い合って、肌で感じることについてお聞きしたいと思います。シンクロでも、海外の選手と日本人選手との違いを感じることがありました。海外の人のほうが大きくて見栄えもしますし。

清水 えっ、青木さんは身長が高いのに、海外の選手はもっと高いんですか?

青木 高いですね。私は北京オリンピックに出場しましたが、そのときの私が173cmで日本チームの中で一番高いぐらい。でも海外のチームだったら170cmだと低い方です。だから日本人は小さいって見られていました。

清水 そうなんですか。空手だと、海外の組手の選手は身長が高くて手足が長いですね。形の選手はそれほど大きな選手が目立ってはいないのですけど、やっぱり海外の選手は骨格がしっかりしていて力強さがあり、力勝負すると負けてしまうかなと思うことがあります。空手は日本の伝統の競技でもあるので、私たち日本の選手は日本人にしかできない繊細な部分、力だけではなく「日本人らしさ」を追求して行くことが大事だと思います。

青木 普段はどういったトレーニングをしていますか?

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清水 基本的には形の稽古です。試合の回戦(例えば2017年の全日本選手権・女子個人戦なら1回戦から決勝まで4試合)が多くなればなるほど形を毎回変えないといけない分、練習する種類も増えるので、時間がたくさん必要です。逆に大会まで1カ月以上空く時期には、基本を積み上げるようにしています。

青木 形の稽古以外のトレーニングはどんなものですか? 例えば筋トレとか、体幹を鍛えるとか。

清水 はい。体幹に関しては毎日、練習前にちょっと刺激を入れるようにしています。ウエイトトレーニングもしますが、表面的(外側の筋肉の強化)になってしまうので、実際の競技につながるように、キレのある動きを出せる体を目指して内容を工夫しています。

試行錯誤の末に壁を打ち破る、一瞬の喜び

青木 形の構成は決まっていると先ほどお聞きしましたが、選手によって個性は出るものですか?

清水 大きく出ますね。緩急の付け方や間の取り方は選手それぞれです。突き一つにしてもやればやるほど、力の伝え方などが変わってきますし、深みを理解することで味も出てきます。例えば、中高生は元気な、若い打ち方が特徴になりますが、大人になればなるほど味があって、重厚感や力強さ、見せ方などが加わってくると思います。

青木 清水選手も中高生の頃から変わりました?

清水 そうですね。高校から大学に上がるときも、社会人になるときも、大きく変わりました。スピードや勢いだけでは通用しなくなるので、自分から変えていかないと。

青木 今の清水選手の特徴というと?

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清水 一つひとつの技に気持ちを強く出す、攻撃的な形を打てることが自分の良さかなと思っています。

青木 清水選手は空手という「道」の精神や文化の中で、大切にされている部分はありますか?

清水 空手の成り立ちは護身で、最初に形ができて、そこから組手も生まれていきました。自分を護るための形が、かたちを変えずに受け継がれているということを大切にしていきたいと思います。競技として取り組むだけでなく、伝統をつなぐ使命を果たす。日本発祥の空手において、それが私たちにとって大切にすべきことだと思っています。

青木 清水選手自身が感じている、空手の形の一番の魅力はどういうところですか?

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清水 形はやる人によって全然見え方が違いますし、やればやるほど深さも味も出てくるというところです。おそらく周りから見ると、同じことをひたすら練習しているように見えると思うのですが、練習を積み重ねることで何かが開花することがあるんです。「思いどおりにできないな」と感じながら試行錯誤をずーっと繰り返した先に、急に「あ、こうすればいいんだ」「あ、できた」みたいな。そういった壁を打ち破る一瞬の喜びのために、私は頑張っています。

青木 応援する皆さんにとって、形の試合の楽しみ方はどのようなところにあると思いますか?

清水 初めて見る方たちには、予備知識がないまま、見たものをそのまま肌で感じ取ってほしい。私は一番にそう思います。また、空手を自分でもやってみたいという方には、何歳からでも始められるということをぜひ知っていただきたいと思います。実際、道場には3歳ぐらいから80代ぐらいまで幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。誰にでも親しみやすいところは、空手の良さだと思います。

試合に集中できる環境に感謝、支援には成績で恩返し

青木 今回、スポーツくじの企画でお伺いさせていただきました。空手の大会の運営や施設・設備の整備など、空手の普及に関わる面でも、スポーツくじの収益が役立てられているそうです。

清水 空手界全体が、競技の普及のためにいろんな取り組みを行なっています。選手個人としても、競技者としてのレベルが上がれば上がるほど、大会が増え、遠征も増え、メンテナンスや栄養などいろいろな費用がかかってきます。スポーツくじに支援していただいていることは、本当にありがたく、試合に集中できる環境を作ってもらえていると思います。こうした支援をしてもらった分は、成績で恩返しするしかないと思っています。

2020年、そしてその先に向かって

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青木 では最後に、2020年の東京オリンピックに向けての意気込みをお聞かせください。

清水 はい。2020年東京オリンピックまで、あっという間だと思っています。悔いのないように、できる限りのことを全部やりきってその舞台に立てるようにしたいです。オリンピックの切符をとるまで、いろいろな苦難があると思いますが、それをしっかりと乗り越えて、オリンピックの舞台ですべてを出し切れるように頑張りたいと思っています。オリンピック本番で、金メダルはもちろんですけれど、それ以上のものを勝ち取るためにいい演武をして、いろんな人たちに見てもらいたいと思っています。オリンピックに限らず、選手としてただ競技をやるだけじゃなくて、人の心に何かを残せる、何かを刻み込める人間になりたいです。自己満足で終わるのではなく、ちゃんと周りに何かを伝えて、子どもたちにそれを引き継いでいけるような選手になりたい。「こういう形を打ちたい」とか「人間性の部分でもこういう選手になりたい」と思ってもらえるような、そういう人間になりたいと私は思っています。

青木 ありがとうございます。これからも頑張ってください!

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清水 希容しみず きよう

1993年12月7日、大阪府出身、ミキハウス所属。小学3年生の時に空手を始め、高校3年生の全国高等学校総合体育大会で優勝。国内では2013年の全日本空手道選手権で、史上最年少での優勝をかざり、現在5連覇中。国際大会では世界空手道選手権大会2連覇、ワールドゲームズ2017優勝など、数々の試合で優勝。東京2020オリンピックではメダル獲得が期待されている。

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青木 愛あおき あい

1985年5月11日、京都府出身。地元の名門クラブ・京都踏水会で水泳をはじめ、8歳から本格的にシンクロナイズドスイミングに転向。国内大会のジュニア五輪で優勝するなど頭角を現し、中学2年から井村雅代氏(現・代表監督)に師事する。20歳で世界水泳に臨む日本代表に初選出。2008年北京オリンピックに出場。引退後は、メディア出演を通じてシンクロに限らず、幅広くスポーツに携わっている。

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