私たちの街のGROWING

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私たちの街のGROWING

熊谷市がラグビーワールドカップ2019™招致に込めた“街と人のレガシー”

 2019年9月、いよいよアジア初となるラグビーワールドカップ2019™が日本で開催されます。開催都市は全国12都市。公認チームキャンプ地も含めると、北は北海道から南は沖縄まで、ホイッスルが鳴り響く瞬間を日本中が待ちわびています。ラグビーによる街づくりに取り組んできた埼玉県熊谷市も開催都市のひとつ。3試合がおこなわれる熊谷ラグビー場は、スポーツくじ(toto・BIG)の収益による助成金を活用して大型映像装置(811インチ)および夜間照明灯を整備するなど、埼玉県と熊谷市が“スクラム”を組んでインフラ整備や街づくりに取り組んできました。9月20日の開幕を前に、埼玉県県民生活部ラグビーワールドカップ2019大会課広報・普及担当の角田榮司さん、熊谷市総合政策部ラグビーワールドカップ2019推進室の室長・島村英昭さん、企画調整幹・小泉照雄さん、主事・木川隼吾さんに開催までの道のりをお伺いしました。

ラグビータウン熊谷に、ラグビーワールドカップ2019™を迎えたい

 熊谷市が全国有数のラグビータウンとして名を馳せていることをご存知でしょうか?
 その歴史をひもとけば、1951年に熊谷商工高等学校(現在の熊谷商業高等学校と熊谷工業高等学校)が県大会で初優勝し、全国大会の常連に。1990年には熊谷工業高等学校が県勢として初めて“冬の花園”(全国高等学校ラグビーフットボール大会)を制覇しました。翌年には熊谷ラグビー場が完成。トップリーグや春の全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会の試合がおこなわれるなど、秩父宮ラグビー場(東京都)、東大阪市花園ラグビー場(大阪府)と並ぶ聖地として愛されてきました。

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島村「小学生を対象としたラグビー教室やタグラグビーの普及活動、国際試合のパブリックビューイングなど、熊谷市はラグビータウンとしてさまざまな活動に取り組んできました。そもそもラグビーの専用球場がある都市自体が少ないですし、東の聖地としての自負もあります。ラグビーワールドカップ2019™を熊谷市に迎えたいというのは、熊谷市の総意でした」

 そう語る島村さんは、2011年のラグビーワールドカップ2019埼玉県招致委員会(熊谷市などが主体となって設立)発足時からプロジェクトに携わっている人物。熊谷市の想いを胸に、ラグビーワールドカップ2019™招致に向けた長い道のりが始まりました。

開催都市に決まった、忘れられないあの日

 2014年には、埼玉県と熊谷市がスクラムを組み、埼玉県ラグビーワールドカップ2019招致委員会を設立。公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会(以下、組織委員会)に開催希望申請書を提出し、招致に向けた新たなプロジェクトが始まりました。そして2015年3月2日、運命の開催都市発表の日を迎えます。

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角田「当時、私はまだプロジェクトに参加していませんでしたが、発表されるまでは五分五分の状況だったと聞いています。メディアは北海道札幌市や岩手県釜石市などを有力候補地として報じ、熊谷市は当落線上というポジションでした」

 当時、総合政策部の部長を務めていた小泉さんも、「2月はずっと気を揉んでいた」と発表当日を振り返ります。

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小泉「記者会見の会場も用意していましたが、本当に発表の瞬間までどうなるかわからない状態。市長や島村さんと市長室に集まって、食い入るようにインターネット中継を観ていました。
 発表の順番は北から。まずは札幌市が決まり、次に釜石市…そのとき、通訳の方が釜石市のところで『熊谷』と読んでしまったんです。手に汗を握って観ていた私たちは、『あれ、いま熊谷って言ったよね!?』と大騒ぎ。すぐに市長室に記者たちを呼んで、フライング気味に万歳三唱しました(笑)」

胸を張って世界に誇れるスタジアムが完成した

 熊谷市にラグビーワールドカップ2019™がやってくる! そう沸き立ったのも束の間、熊谷ラグビー場の改修というビッグプロジェクトが動き出します。試合会場の選定基準などをまとめた組織委員会のガイドラインは、決してハードルの低いものではありませんでした。

小泉「元々の熊谷ラグビー場は秩父宮を参考にして作られた、古き良きラグビー場。グラウンドの広さは秩父宮や花園を凌ぐものでした」

島村「一方で、メインスタンド以外の三方は土手に土を盛って高くしていたので、大幅に改修する必要がありました。骨格だけ残して全面的にリニューアルする計画でした」

角田「ガイドライン上で熊谷ラグビー場が満たすべき基準は、座席の大幅増、照明で2,000ルクス、大型スクリーン1機以上など。イギリスのリコー・アリーナへ視察に行くなど、試行錯誤を重ねながら改修が進みました」

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 2018年10月、約2年の歳月をかけて生まれ変わった熊谷ラグビー場は、目を見張る進化を遂げました。座席数は約2万4,000席。メインスタンドからピッチまでの距離は14mから9mに短縮され、席が上に行くほど傾斜が強くなり、後ろの席でも見やすい臨場感のある作りになっています。

 かつてトップリーグのパナソニック ワイルドナイツで選手として活躍し、現役引退後に熊谷市総合政策部に入職した木川さんは、生まれ変わったスタジアムに驚いたといいます。

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木川「グラウンドの高さを1m上げたこともあって、臨場感が本当にすごいです。実際にプレーした選手に聞いてみても、観客との距離が近いから歓声がダイレクトに伝わってくると。プレーしていてテンションが上がる、最高のスタジアムだと口を揃えて言っていました。
 円形に並んだロッカールームはお互いの顔が見えるので士気が高まり、疲労回復を早めるアイスバスの設備も喜んでいましたね。スクラムを組むとスパイクが芝に引っかかることがあるのですが、ここの芝は刺さり具合が良いと誉めていました」

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角田「ティフグランドという暖地型の西洋芝を、国内のスタジアムで初めて導入しました。密度が高いのでクッション性があり、選手のダメージを軽減する安全性の高い芝です。スポーツくじの助成金のおかげもあり、胸を張って世界に誇れるスタジアムが完成しました」

大会終了後も、2万4,000人をおもてなしできる街をつくる

 木川さんは、熊谷市が開催都市に決定した日のことが今も強く印象に残っていると言います。

木川「熊谷市の西隣にある深谷市で生まれ、小さい頃からラグビーをやってきた私は、熊谷ラグビー場で何度も試合や練習をしてきました。そんな思い出の地でワールドカップが開催される。決定したことを知った瞬間は、埼玉県出身のチームメイトと大喜びしました。そして、引退を決意したとき、自分を育ててくれたラグビーに、この街に、どんな形であれ恩返ししたいと思ったのです」

 ワールドカップが開かれる“この街”に恩返しする。それは、大会終了後も終わることなく続いていくもの。その想いは、ほかの3人の胸の内と確かに共鳴しています。

角田「熊谷ラグビー場は、国際的な試合ができる素晴らしいスタジアムに生まれ変わりました。ジャパンラグビートップリーグのチームであるパナソニック ワイルドナイツの本拠地移転に向けた協定も結び、常に最高水準の試合が観られる環境が整いつつあります。何より、スポーツ施設の整備によって、地域の方々がラグビーを通して交流できるコミュニティを作れたことが私の大きな喜びです」

島村「世界三大スポーツイベントのひとつが自分の街で開催される。熊谷市にとって、目に見えて誇れるものがまさに今、形づくられています。一方、熊谷を訪れた人たちにも、『熊谷でラグビーを観て楽しかったね。また来たいね』と思っていただきたい。熊谷に住む人、訪れる人、双方の財産となる取り組みを続けていきます」

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 その取り組みの核となるのが、2019年5月に始動した「スクマム!クマガヤ」。「スクラム」と「クマガヤ」を掛け合わせた新たなスローガンで、ラグビータウンを“市民主体”で盛り上げるプロジェクトです。

小泉「ワールドカップの試合時には2万4,000人が熊谷市を訪れ、駅から会場まで400台以上のシャトルバスを走らせます。言うまでもなく、これは熊谷市にとって前例のない規模のイベントです。
 では、ワールドカップだけで終わりなのか、頑張ったねでいいかというと、そうではない。絶対にそうしてはいけません。大会終了後も、再び2万4,000人を呼べるイベントを、おもてなしできる街をつくりたい。そして、その目標に熊谷市全体で、市民が主体となって取り組もうという意思表明が『スクマム!クマガヤ』です」

 実際に、「スクマム!クマガヤ」の輪は街に広がりつつあります。

小泉「『スクマム!クマガヤ』のシンボルマークを使いたいという連絡は毎日のようにあります。例えば、JR熊谷駅には『スクマム!クマガヤ』のポスターやフラッグ等がたくさんありますが、あれはJRさんが我々のプロジェクトに賛同して自発的にやってくださったものです。
 駅から熊谷ラグビー場を結ぶラグビーロードにしてもそう。我々がお店に協力をお願いして回るのではなく、お店側から参加したいと申し出てくださいます。市民が自ら熊谷市を訪れる人たちを楽しませたいと思わなければ、こうしたプロジェクトは長続きしないのです」

 ラグビーワールドカップ2019™というイベントをきっかけに、街が変わる。そして、街に暮らす人々の“心”が変わる。それが長きにわたるプロジェクトの目標であり、願いでもあります。

小泉「2万4,000人をおもてなしできる街に暮らすことは、必ず市民の誇りになります。ワールドカップをきっかけに、訪れた人に街の魅力を感じてもらい、また来たいと次に繋げることが大切。おもてなしをする、楽しませる、盛り上げる、それには熊谷市に暮らす人々の覚悟が必要です。その覚悟が我々の手を離れて街全体に広がり、根づいていく。それこそが本当の“レガシー”だと私たちは信じています」

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熊谷駅前にあるモニュメント「ラグビーボールと少年」

 生まれ変わった熊谷ラグビー場という“目に見えるレガシー”と、街の人々の意識が変わるという“目には見えないレガシー”によって、熊谷市の街づくりは新しい一歩を踏み出しました。市民が今まで以上にラグビーに親しみ、トップレベルの試合を観戦し、スポーツの喜びを分かち合うコミュニティが生まれる――。そんな未来の光景が、熊谷ラグビー場を起点に描かれていくことでしょう。

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Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

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