インタビュー

インタビュー

世界で戦える選手を育成する。廣山望のサッカー指導者としての挑戦

totoの助成によって海外研修を受けた指導者が次世代の育成に取り組む

2001年に海外でプレーすることを選択し、ブラジル、ポルトガル、フランスを始めとする5カ国で活躍した廣山望氏。日本ではジェフ市原や東京ヴェルディ、そして日本代表で活躍した。2013年、廣山氏はtotoの助成を活用し、スポーツ指導者海外研修でスペインへ1年間留学。帰国後2014年から、JFAアカデミー福島でU-15の育成に携わっている。選手からコーチへとステージを変えた廣山氏に日本と海外の違い、そして育成にかける想いを聞いた。

指導者研修でバルセロナに1年間留学し、8チームに関わる

――廣山望コーチは、現役時代、日本代表も経験し、さらに、海外チームに移籍し5カ国でプレーした経験を持っています。引退後、指導者の道を選んだ理由は?

いろいろな国でプレーすることで、南米やヨーロッパはクラブ運営やマネージメントが日本より進んでいること、アメリカはスポーツビジネス全体が発達していることを知りました。日本とは異なる文化や環境に身を置く経験の後、引退を考えた時にやはり「ピッチを離れるのはもったいない」と強く思い、指導者としてやっていく決断をしました。

――2013年の1年間は、toto助成事業の一つである「スポーツ指導者海外研修事業」によってスペインのバルセロナに留学しました。どのような経緯で決まったのでしょうか。

JFA(公益財団法人日本サッカー協会)のB級コーチのライセンスの取得を機にJFAの方と連絡を取り合う中で、引退の話をしました。そこで「指導者海外研修の制度を利用してみないか」とお話をいただきました。もともと海外でのコーチ修行を考えていたので、大変ありがたいお誘いでした。

――留学先をバルセロナにしたのはなぜですか。

現役時代に、スペイン語圏のパラグアイでプレー経験があったことと、もともとスペインのサッカーに興味があったからです。フランス時代の友人やスペインに在住している友人など、ヨーロッパでプレーしていた時の人脈を活かして、受け入れ先の各クラブも自分で探しました。

――1年間、実際にどういった勉強をしていたのでしょうか。

スペインの2部リーグから4部のクラブまでのトップチームや、U-18、U-15、U-12など、合計8チームを見て回りました。1つのチームに帯同するやり方もありますが、僕の場合は1年間という期限があったので、短い期間の中でできるだけ多くのことを吸収したいと思い、1つのチームを2~3週間で見ていくことがベストだと考えました。1チームにつき2週間ほど必要だったのは、試合に備えてトレーニングし、実際に週末に試合をし、その結果を受けて次の1週間、またトレーニングするという流れを知りたかったからです。

海外と日本、コーチの役割や位置づけの違い

――海外研修で、実感した海外と日本の違いはどんなところでしたか。

大まかに言うと、日本のコーチングは減点方式になってしまう事が多く、ネガティブな部分を指摘して育てようとします。ヨーロッパやアメリカのコーチングは逆で、選手の持っているポジティブな面を引き出そうとする加点方式です。この違いが最も大きいと思います。

どちらにも良い点はあると思いますが、日本のサッカー全体のことを考えれば、加点方式のコーチがもっと増えてもいいのではないでしょうか。今後、グローバルで戦っていくには、ポジティブな面を大きく育て失敗を恐れない子どもたちを育成していく必要があると感じています。

コーチには選手のチャレンジを評価しつつ、欠点を補う指導をするというバランスの良さが求められるのではないかと思っています。

――コーチの役割について、日本と海外では大きく異なる部分はありますか。

スペインでは、コーチがチームのマネージメントをするということを学びました。育成年代でも、良いコーチが優れた能力を持った選手を外部から連れてくることができ、逆に他のチームに選手を取られないように魅力的なチームを作っていくことが大切になります。日本の場合、スペインのようなドライさはないですが、コーチが指導だけでなく、チームをマネージメントすることの大切さは同じだと考えています。

――バルセロナ留学中に、最も驚いたことは何だったでしょうか。

スペインでは、コーチがパイロットや教師などと同じように、1つの職業として確立されていることにとても感銘を受けました。教育機関で幅広い勉強をし、資格を取らないとコーチになることができず、コーチになってからも常に実力を評価されるシステムができあがっています。選手時代の経歴は関係なく、コーチとして良い仕事をすると高く評価されて引き抜かれていきます。それが小さなクラブから国の代表にまで脈々とつながっていて、選手を見る目と同じように、コーチを見る目がとてもしっかりしていました。

ユース年代の育成の難しさ、楽しさ

――帰国後、2014年2月からは、JFAアカデミー福島のコーチに就任し、U-15の指導を担当されています。

「スポーツ指導者海外研修事業」は、研修を終え帰国した後は、その経験を所属団体に還元することになっており、そのなかでJFAアカデミー福島でのコーチ就任が決まりました。

僕の場合、サッカーの指導そのものを勉強している立場であり、育成年代を指導したいと思っていたので、U-15を担当できることになってとてもうれしく思っています。

――U-15を指導する楽しさ、難しさはどんなところでしょうか。

彼らはすでにJFAの看板を背負っていますし、サッカーの、そして人としてのエリートを目指していますが、こうしたことを強調し過ぎると堅苦しくなったり、余裕がなくなったりします。規律は重視しつつも、ピッチに出た時には伸び伸びとプレーできるように、バランスを考えていかなければなりません。この点が難しいところであり、楽しいところでもあります。

――サッカーに限らず、ユース育成の重要性については、どのように考えていますか。

育成の考え方には色々なものがあっていいと思っています。答えは1つではなく、さまざまな可能性を示さないといけません。僕はまだ新米コーチですが、先輩のコーチが毎日頭を抱えながら、あれこれ工夫を凝らしている姿を見て、そういう努力がとても大切なのだと感じています。育成年代には「あれはダメ、これもダメ」と言うのではなく、認めてあげるスタンスで接して失敗させてあげないと、大きな舞台で伸び伸びと力を発揮できる選手には育っていかないのではないかと思います。

――サッカー以外にも指導者研修の制度を活用してさまざまな競技のコーチが海外へ留学しています。その意義や意味をどう感じられていますか。

日本で始まったスポーツもありますが、オリンピック競技の中には主流が海外にあるスポーツが多く、長い歴史や文化を持った場所で学ぶ意味は大きいと思います。コーチングだけでなく、背景を学ぶことができ、海外におけるスポーツの捉え方の違いも大変勉強になります。

海外で得た知識や経験でサッカー界に貢献したい

――コーチとしての今後の目標を教えてください。

選手時代もそうでしたが、今取り組んでいることで自分が成長すると、将来の選択肢が変わってきます。日々、一生懸命やらないと分からないことばかりですし、どれだけ選手たちを成長させることができるか、そして自分が成長できるか、だと思っています。

そのために自分が思っていることを、どんどん選手たちに伝えていきたい。大きな目標として、自分が選手として今まで経験してきたことや今回の留学で得たことで、必ず日本のサッカー界に貢献していきたいですね。

――totoの助成を受けて海外留学したことについて、今、どう感じていますか?

海外での勉強はいろいろな状況があって、実現できない人がいるかもしれません。僕はこの制度があったからこそ一歩踏み出せましたし、得た知識や経験は想像もできなかったくらい大きかった。留学させてもらっている者の責任を感じながら、本当に良い体験ができました。もちろん、バルセロナでは精一杯やったという自負を持っています。

――最後にtotoを通じてサッカーをはじめとしたスポーツを応援、支援してくれているファンにメッセージをお願いします。

僕自身今回1年間海外で指導者研修を受けることができましたし、現在所属する「JFA アカデミー福島」もtotoの助成で事業が運営できていることから、いろいろな場面でtotoが役立てられていることを実感し、感謝しています。

2020年にはいよいよ東京でオリンピックが開催されます。多くの人がtotoの助成を通じて、スポーツを身近に感じられるようになることで、いろいろなスポーツに関わったり、興味を持ってもらえるよう、僕自身もいろいろな努力をしていこうと思っています。

(2014年7月 JFAアカデミー福島にて)

廣山 望ひろやま のぞみ

1977年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部在籍中にジェフ市原に入団。U-20日本代表としてU-20ワールドカップに出場。ジェフ市原を経て、2001年には海外チームに移籍し、5カ国で活躍した経験を持つ、元日本代表。現在は指導者となり、2013年1月から1年間、toto助成事業の1つである「スポーツ指導者海外研修事業」でバルセロナへコーチング留学を経験した。
2014年2月からJFAアカデミー福島でU-15を指導している。


■JFAアカデミー福島について
公益財団法人日本サッカー協会は世界トップ10を目標とし、代表チームの強化に加えてユース育成、指導者育成を合わせ、総合力向上を目指している。その中でJFAアカデミーは中学・高等学校の6年間、ロジング形式(寮生活)で所属する選手を強化するとともに、全国に育成モデルを示し発信することを目的として活動しており、スポーツ振興くじ(toto)の「将来性を有する競技者の発掘および育成活動助成」の対象となっている。2006年4月にJFAアカデミー福島が開校し、その後、JFAアカデミー熊本宇城、JFAアカデミー堺と増え、2015年4月には4校目となるJFAアカデミー今治が開校する。(注:JFAアカデミー福島は2011年の東日本大震災の影響で、2014年現在、静岡県御殿場市に一時移転している)

アンケートにご協力ください。

Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

とても理解できた
なんとなく理解できた
理解できなかった
Q2

スポーツくじ(toto・BIG)の取り組みに共感できましたか?

とても共感できた
なんとなく共感できた
共感できなかった
送信