インタビュー

インタビュー

真の柔道、ここにあり! 王国復活へ向けた、さらなる高みへの挑戦

井上康生全日本柔道男子監督のもと、強さを極める男子柔道

ロンドン五輪でまさかの金メダル0個という結果に終わった、全日本柔道男子。その悔しさをバネに、新たに就任した井上康生全日本男子監督のもとあらゆる面での改革をすすめ、2015年8月の世界選手権では素晴らしい好成績をおさめました。2016年のリオデジャネイロ五輪を控え、メダルへの自信を深める井上監督と、全日本男子66kg級のエース海老沼匡選手、同階級で次世代のホープ阿部一二三選手に、現在の日本柔道の強さの理由について、各選手の見どころなど、それぞれの視点から話をうかがいました。

全日本柔道男子監督・井上康生氏インタビュー

ロンドン五輪後の就任以来、すべてを見直し立て直す

――2015年8月にカザフスタン・アスタナで行われた世界選手権で、男子は個人で金メダル3、銀メダル2,銅メダル2,団体優勝と、柔道王国日本復活の印象を与えました。この好結果の要因は何でしょうか。

今回の世界選手権は、2016年のリオデジャネイロ五輪に向けて弾みのつく大会になったと思います。特に課題だった81kg級以上で4人ともメダル獲得という結果を出せたことに大きな手応えを感じています。

2012年のロンドン五輪では思ったような結果を残すことができず、その要因を考えました。かつては、どちらかというと、練習に「量」を求めていました。一方で海外の選手たちは効率を追求し、練習の中で試合に近いものをとことんまでやっている。選手たちが世界と戦っていくにはバランスが非常に大事だと思ったのです。

また、少しずつ選手の意識が変わってきたことがありますね。もちろん選手たちは一試合一試合すべてをかけて戦っていますが、やはり全日本の選手である以上は、誇りと自覚を持って、もっとプロフェッショナルな意識を持ってもらいたいと考えていました。技術ももちろんですけど、特に考え方の面で非常に成熟してきています。

――コーチとして参加した2012年ロンドン五輪終了後、全日本柔道男子監督に就任しました。具体的にはどのようなことに取り組んだのでしょうか。

まず、コーチやスタッフといった環境を整える側のレベルアップが必要でした。色々な分野のプロフェッショナルの力を借りて、組織力を高めていきました。柔道が世界で戦っていく中で、技術だけ持っていけば勝てるわけではありません。例えば総合的な体力をつけるという意味で、ボディビルの専門家に力を借りるなど、トレーニングメニュー、食事、休養、すべてを見直しました。

また、海外選手の分析も、これまで感覚的に判断がされてきたものをデータ化し、数値で選手たちに提供していくようにしました。海外は日本を丸裸にするくらい分析していると言われていましたが、日本は残念ながら細かく行っていませんでした。今は試合の映像が簡単に手に入る時代ですから、ここから先はその情報をどう活かすかが重要となります。常に映像、数値などを見ながら、日本として海外より先に何を取り組まなければいけないかなどを考えながら指導しています。

さらに、選手は日本代表と所属チームでの活動が半々ですので、いかに所属チームでの練習を代表での活動につなげるかが大事です。そこで、全日本で分析した情報を数値、データで所属の先生方に説明をするなど、全日本と所属チーム間の連携を強めてきました。所属の先生方のご理解と、全日本に携わっているコーチ、スタッフの熱意が良い形でマッチし、結果となって出ていると思っています。

日本の柔道と世界のJUDO、その違いを研究し、対応を取り入れる

――2009年1月からスポーツ振興くじ助成事業「若手スポーツ指導者長期在外研修」の一環で、JOC(日本オリンピック委員会)スポーツ指導者海外研修員としてスコットランドに留学されました。監督・コーチとして指導するにあたり、やはりその経験は活きているでしょうか。

元ヨーロッパ柔道連盟副会長のジョージ・ケアという方がいまして、彼の元でいろいろ学びたかったのでスコットランドのエジンバラを選びました。また今の柔道界はヨーロッパが主流なので、ヨーロッパの柔道を研究したかったことも理由の一つでした。組織や効率にしても、日本と全く違い、学ぶことがたくさんありました。

また、それまで選手として柔道一筋でやってきて、柔道で勝ち上がってきたつもりでした。でも、いざ海外に出てみれば、自分は一人の平凡な人間で、自分の無知を知りました。それが留学した一番の収穫ですね。それがあるから、今も学ぶ心を忘れないでいられます。選手は十人十色。それに対応するためにいろんな指導をしないといけないし、そのためには勉強し続けなければいけないと感じられたのは良かったですね。

――井上監督は東海大の准教授でもいらっしゃいます。最近はどんなことを研究しているのでしょうか?

現在、漢字の「柔道」と英語の「JUDO」は違うものだと言われています。「JUDO」はいろんな国々の格闘技の複合体となっています。たとえば、ロシアはサンボ、ジョージアはチタオバ、モンゴルはモンゴル相撲と、各地域の格闘技をルーツにして作り上げています。だからそれぞれのルーツを学ばなければ対応できないので、様々な世界の格闘技を研究していますし、それの対応も全日本の合宿でも取り入れています。国際大会に行っても、他の国の選手の特殊な技がないか見て研究しています。

真の柔道を示せるのは我々日本の選手しかいない

――今回、男子66kg級の海老沼匡選手、阿部一二三選手にもお話を聞いています。2人は井上監督から見て、どんな選手でしょうか。

海老沼は昨年まで世界選手権で3連覇を達成した66kg級の第一人者です。世界選手権はケガにより調整不足もありましたが、間違いなく世界トップの力を持っています。阿部は海外で2敗してしまいましたが、2015年10月のウズベキスタンの大会では圧勝しました。世界チャンピオンと若手の台頭というのは、日本代表の強化として考えると理想的です。お互いに良い刺激を与えながら頑張っていると思います。

――全日本柔道男子監督として、リオデジャネイロ五輪は、どんな大会にしたいですか。

ようやくリオデジャネイロ五輪に向けて全階級金メダルを目指すと胸を張って言えるようになってきました。しかし、現実は一つ一つがギリギリの戦いなので、どう転ぶかわからない。個々がいかに接戦を制する選手、チームになっていくかが大事なので、選手たちには、なぜ細かな練習や分析を取り入れる必要があるかということを常に言っています。また、我々の競技は肉体と肉体がぶつかる勝負の中で異常なまでのどう猛さや執念が必要ですし、さらに試合では予期せぬことが起きます。その対応には非科学的トレーニングの重要性を感じます。「科学的かつ非科学的トレーニングのバランス」がとても大切だと考えています。

2012年のロンドン五輪で、男子柔道はまさかの金メダル0という結果で終わってしまいました。また、2020年には東京五輪も控えていますし、柔道全体を考えるとリオデジャネイロ五輪は非常に大きな大会です。もちろん、選手たち個々の目標、夢を実現させてあげたいし、一監督としては、オリンピックで「日本柔道、ここにあり!」ということを、世界に知らしめたいと思っています。「JUDO」ではなく真の「柔道」というのはこういうものだと示せるのは我々日本の選手しかいないと思っています。もちろんそれは「技術と精神」の両面であり、それをオリンピックで見せられるように準備していきたいですね。

柔道が日本社会にとって必要だと思われるように

――totoのくじ助成は、井上監督ご自身も経験された柔道指導者の海外での長期研修や、映像・情報戦略活動などに役立てられています。こういったtotoの助成に関して、柔道界に身を置かれているお立場としてはどのように考えていますか。

日本柔道界を大きく支えていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。日本柔道界の支えになっているのは、所属チームの力も大きいですが、特に大会や分析等に対しての助成は、日本の柔道の発展に欠かせないものだと思います。私たちはそういったサポートに応えるために、オリンピックや世界柔道など大きな大会で結果を出して、柔道が日本社会にとって必要だと思われるようなスポーツにしていかなければいけないと考えています。今後もお力を頂きながら、競技力向上、そしてスポーツが価値あるものになっていけるように努力していきたいと思います。

――最後に、totoを購入して、柔道をはじめとして、さまざまなスポーツを支援してくれているファンの方々へメッセージをお願いします。

totoを購入して、いつもサポートしてくださって本当にありがたく思っています。多大なるご声援、ご支援を頂いている自覚を持った上で、私たちが恩返しできるのは、やはり試合で勝ち、それによって柔道、スポーツの素晴らしさを広めることで実感してもらうしかないと思っています。男子柔道に日本のファンの期待が高いのは、それだけ高く評価していただいていることだと思います。プレッシャーもありますが、それを力に変えて、誇りを持って選手たちと一緒に戦っていきます。今後も柔道の応援のほどよろしくお願いします。

井上 康生いのうえ こうせい

1978年5月15日、宮崎県宮崎市出身。2000年シドニー五輪100kg級金メダリスト。2008年の現役引退後、日本オリンピック委員会(JOC)の2008年度スポーツ指導者海外研修員として2年間スコットランドのエジンバラに派遣された。2011年4月より東海大学体育学部武道学科専任講師 兼 東海大学柔道部男子副監督に就任。全日本柔道男子のコーチを経て、2012年より監督に就任。2015年4月より東海大学体育学部准教授。

海老沼匡選手インタビュー

柔道は、突き詰めても完成形がない。無限なところが面白い

――海老沼選手が柔道を始めたきっかけは? また得意技や長所を教えてください。

兄がいて3兄弟の末っ子なのですが、兄について町道場に遊びに行っているうちに自然と始めました。何歳か覚えていないくらい小さい頃でしたね。柔道の楽しさは、突き詰めても完成形がないところです。試合は何が起こるかわからないですし、対戦相手によっても変わります。限界がないところが面白いと感じています。

得意技は背負投げで、軸になっていますが、それ以外の技もやっていきたいですね。また長所は試合の最初から終わるまで攻め続けるスタミナです。一般的に日本柔道は組んで投げるスタイルです。ルール改正などもありましたが、それでも日本が強いことを証明するために攻め続け、勝たなくてはいけないと考えています。

――海老沼選手は2012年、初めて出場したロンドン五輪で銅メダルを獲得しました。

無我夢中でしたね。当時の記憶がないくらいで、ただ体を動かしていた感じでした。結果は銅メダルでしたが、金メダルじゃないといけないと思っていました。負けてしまったのは、実力もそうですが、平常心で戦えなかったことが要因だと思っています。その後、一番大きな大会を経験したことによって、大会や世界選手権での気持ちのつくり方に変化が出てきました。

ただ、2015年8月の世界選手権では、思うような結果を出すことができませんでした。試合前にケガなどの試練などがいろいろ多くて、浮き足立っていました。一番悔しかったのは自分の柔道ができなかったことです。今の力を全部出して戦うことができませんでした。

動じない心を作らないと、オリンピックの舞台では勝てない

――日本の男子柔道としては世界選手権で、個人で金メダル3、銀メダル2,銅メダル2を獲得し,海老沼選手も団体優勝に貢献。かつての強さが戻りつつあります。

井上先生がいろんな人を巻き込んで、みんなで一丸となって取り組んでいることが大きいです。ロンドン五輪が終わってから、段階を踏んで結果を出せているのは、井上先生の意図に沿って強化が進んできているということではないでしょうか。

井上先生は僕にとっては憧れの選手でもありましたし、今は自分の道しるべのような存在です。選手主体で考えてくれて、僕らが勝てるための環境を整えてくれています。また、所属チームの監督とのコミュニケーションも重視していて、全日本と所属チーム間の連携がうまく取れていると思います。

――いよいよ2016年にはリオデジャネイロ五輪、2020年には東京でオリンピックも控えています。

自分の夢で、目標でもあるのがオリンピックの金メダルです。金メダルを取るためには、まず国内選考に勝って代表にならないといけないので、これからの試合はひとつも落とせないです。実は世界選手権のほうが各国から強い選手が何人も出るのでレベルは高いのですが、オリンピックは世界から注目される大会です。動じない心を作らないとあの舞台では勝てない。さまざまな経験を経て強くなっていると思うので、それを活かしていきたいです。

2020年については、まだそこまで考えることはできませんが、もし出場できるなら東京でも金メダルを取りたいです。ただ、僕はあまり先の将来まで考えられるタイプではないので、まずはリオデジャネイロ五輪で金メダルを狙います!

試合に勝って、みなさんに熱く観戦してもらいたい

――totoの助成は、柔道のタレント発掘や一貫指導育成、国際競技大会開催などに役立てられています。選手としてはどう考えていますか。

さまざまな助成やサポートのおかげで僕らが柔道をできることに感謝しています。まず2015年12月のグランドスラム東京で日本選手が勝つことが一つの恩返しになると思っています。日本人のレベルも高いので誰が上がってきてもおかしくない。決勝で日本人対決もあると思っています。日本の中で激しい戦いをすることで、より強くなれます。僕も優勝して、2016年につなげたいですね。

――最後に、totoを買うことで、柔道や他のスポーツを応援してくれているファンの方々へメッセージをお願いします。

いろんな形でサポートしてくださっているファンの方々への感謝の気持ちを表すために、試合に勝って、みなさんに熱く観戦してもらえるようにしていきたいと思います。今後も日本柔道への応援、支援のほどよろしくお願いします。

海老沼 匡えびぬま まさし

1990年2月15日、栃木県小山市出身。幼少期に二人の兄の影響で柔道を始める。パーク24所属。2012年ロンドン五輪66kg級で銅メダルを獲得。2011年~2014年世界柔道選手権で3連覇を果たす。2015年世界柔道選手権では4連覇を逃すも、団体戦の優勝に大きく貢献した。

阿部一二三選手インタビュー

いつもどうやって一本を取るか考えている

――阿部選手が、柔道を始めたきっかけは? また、得意技は何ですか?

どの大会だったかは覚えていないですが、6歳くらいの時にテレビで見て「やりたい!」と思いました。相手を豪快に投げて、試合で一本を取るのは気持ちいいですし、やっていて楽しいです。小さい頃はなかなか一本が取れなかったのですが、中学生から階級別になったので、一本が取れるようになり、ますます柔道が楽しくなりました。いつもどうやって一本を取るか考えています。
得意技は、自分の中では背負投です。周りからは大腰とか腰技のイメージも持たれていますが、背負投で一本取ることにこだわっていきたいですね。また、気持ちの強さはまだまだ足りないと思っています。守りに入ってしまう時もあるので、常に前に出る気持ちをもって、自分の柔道を最後までやる。やり切って負けたら仕方がないですが、下がって負けたら後悔しますから。

――2014年12月のグランドスラム東京で高校2年ながら優勝をし、周囲を驚かせましたね。

あの時はひたすらチャレンジャーというか、思い切っていくだけでした。11月の講道館杯と12月のグランドスラム東京で優勝して、少し成長しているなと感じることができました。勝たないと国際大会には出られないし、経験も積めないので、チャンスをつかめたことが大きかったです。

――その後、国際大会にも出るようになりました。世界の舞台で得たものは?

2015年2月のドイツの大会では相手に力負けして圧倒されました。前に出る柔道が自分のスタイルですが、相手の力が上回っていれば組み負けてしまうので、それだけじゃダメだと実感しました。強い相手とやるときの組手や柔道自体の力、技のキレなど、自分が通用しないところがわかって良かったです。また海外の選手には、いろんなタイプの選手がいることも知ったので、そういう選手にも対応できるようにならないといけないと考えています。
そこで、力の強い選手がいるところに稽古に行ってしっかりと組んで練習をしています。また2015年4月の全日本選抜体重別選手権では、寝技で負けてしまったので、寝技にも取り組むようになりましたね。

東京五輪と言えば「阿部一二三」と言われるようになりたい

――2015年10月、阿部選手がタシケントの大会で優勝したように、男子柔道は最近、力を上げてきて、期待も高まっています。

井上康生監督を中心に、海外の相手にどう対応するか、緻密な研究がなされていることも大きいです。監督、コーチ、スタッフ、そして選手が一丸となって、日本の強い柔道を見せたい、負けられないという気運がそうさせていると感じています。

――2016年は日体大に進学し、リオデジャネイロ五輪も控えています。そして2020年は東京五輪が開催されます。

日体大進学は軽量級のレベルが高いので決めました。またオリンピックに出られるのは1名だけですが、僕のいる66kg級には海外でも結果を残している強い選手がたくさんいて層が厚いです。その中で、誰にも負けない努力をして、一試合一試合を大事に戦っていけば、自然と目標に近づいていくと思っています。オリンピックは小さい頃からの夢でしたが、この1年で目標に変わりました。少ないチャンスでも自分の力でものにできるよう、納得のいく戦いをしたいです。
2020年は、年齢も23歳とちょうど良い時期なので、その時は世界チャンピオンとして出場し、他を圧倒して金メダルを取りたいですね! 東京五輪と言えば「阿部一二三」と言われるようになりたいです。

サポートのおかげで、負けられない気持ちが強くなる

――totoの助成は、柔道のタレント発掘や一貫指導育成、国際競技大会開催などにも役立てられています。 totoの助成について、どのように捉えていますか。

totoの助成やさまざまなサポートのおかげで、遠征に行ったり大会に参加できたりと柔道に集中できているので、本当に感謝しています。サポートや支援があるからこそ、日の丸を背負って戦う気持ち、負けられないという思いが強くなります。良い意味でのプレッシャーを与えてもらって刺激になっています。

――totoを購入して柔道をはじめとするスポーツを応援してくれているファンへのメッセージをお願いします。

みなさんの支援があるからこそ頑張ることができます。勝って格好良い姿を見せて、皆さんに喜んでもらいたいです。そして、僕もそうだったように、小さい子どもたちに夢を与えられる、目標となる選手になりたいです。これからも、一本を取りに行く強い日本柔道を見せますので、応援よろしくお願いします!

阿部 一二三あべ ひふみ

1997年8月9日、兵庫県神戸市出身。6歳から柔道を始める。2014年、高校2年で講道館杯、グランドスラム東京で立て続けに優勝。2015年10月のグランプリ・タシケントでは、オール一本勝ちで優勝した。2016年より日本体育大学へ進学予定。

アンケートにご協力ください。

Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

とても理解できた
なんとなく理解できた
理解できなかった
Q2

スポーツくじ(toto・BIG)の取り組みに共感できましたか?

とても共感できた
なんとなく共感できた
共感できなかった
送信