インタビュー

インタビュー

「神輿の上に担がれていると思え」 金メダル剣士が感謝する支える力

フェンシング 見延和靖選手

個人世界ランキング1位を経験もこだわった東京での団体出場

 ワールドカップ優勝、グランプリ優勝、世界ランキング1位、世界年間ランキング1位、そしてリオデジャネイロオリンピック6位。フェンシング男子エペ個人で“日本初”の活躍を積み重ねてきた見延和靖選手は、2021年の東京オリンピックでは団体戦での出場にこだわり続けた。

 2008年に初めて国際大会に出場して以来、日本代表選手の一人として日本フェンシング界を牽引してきたベテランは、なぜ団体戦にフォーカスしたのか。

「リオデジャネイロオリンピックも団体で出たい気持ちはありましたが、チームとして成熟していなかったので個人戦のみの出場になりました。普段の遠征はチームで出掛けるので、一人だと心細くて(笑)。周りを見ると、団体で出場している強豪国はいつもと同じ雰囲気、もっと言えば、オリンピックを楽しもう、とより良い雰囲気を作って、団体戦はもちろん個人戦にもいい影響を与えているように感じました。フェンシングは対人競技なので一人では練習もできない。個人が高め合い、日本のレベルを引き上げるには、チームとして強くなることが一番の近道だと思いました」

 中学校ではバレーボールに熱中した見延選手は「チームで勝つ、支え合う喜びを知っていたので、団体戦に懸ける想いが強くなったのかもしれません」とも話す。

int_126_1

 フェンシングの面白さは「1対1の駆け引き。間合いの取り合い、心の探り合い」にあるというが、団体戦ならではの魅力もある。1チーム3名(+リザーブ1名)による総当たり戦で、3分×9セットのうち45点を先取したチームか、または試合終了時により得点を多く取ったチームが勝つ団体戦では「誰か一人の力で勝てたり、一人の力で負けることは絶対にない。それぞれの弱点を補い合い、支え合いながら勝ち抜くのが日本のスタイル」と胸を張る。

 とはいえ、フェンシングは基本的には個人競技。個性豊かな選手が多い上に、東京オリンピックでは見延選手を最年長とし、宇山賢(さとる)選手、山田優(まさる)選手、加納虹輝(こうき)選手と続く、年齢差10歳のチームで臨んだ。最高のチームとしての結束を生むために、キャプテンとして何を心掛けたのか。

「選手やコーチがそれぞれ違うスタイルを持つこともある中、自分を認めてほしいから、別のスタイルを否定してしまうことがある。でも、僕はそれは違うし、もったいないと思うんです。自分にないものを採り入れれば、それだけ幅が広がることにもなる。ただ、若手は自分のことで精一杯なので、僕ができるだけ幅の広い意見やスタイルを汲み取って、分かりやすく噛み砕いて伝えることを心掛けていました。聞く耳を持つことは、個性豊かなチームが一つになる上で大切なことだと思います」

フェンシングは「僕の全て」 次世代に伝えていきたい競技の魅力

int_126_2

 そして、もう一つ大切なことがある。それは先人への感謝を忘れないことだ。

「エペはこれまで金メダルに最も遠い種目だと言われていました。それでも先輩方が疑うことなくチャレンジし、1枚ずつ壁を破って前進し続けた。その挑戦を引き継いだ僕らが、同じように一歩前に進んだ先にあったのが金メダル。僕らだけがエペを大きく飛躍させたとは思っていません」

 東京オリンピックの晴れ舞台に立てたのは、先人の挑戦、そして共に練習してきた仲間の支えがあったから。大会期間を通じて、見延選手はチームメートにこう語りかけていたという。

「『神輿の上に担がれていると思え』と言いました。神輿の上には僕ら代表4人が乗っているけど、その下ではたくさんの人たちが担いでくれている。代表として戦う選手だけが全てではない。フェンシングに関わる全ての人々の想いが一つになったからこそ、金メダルが獲れたんです」

 普段から周囲の支えに感謝する気持ちを持つからこそ、トップアスリートの活動だけではなく、次世代アスリートの発掘・育成、地域のスポーツ大会・教室の開催や施設の整備など、広く日本のスポーツを支えるためにスポーツくじの収益が役立てられていることに感謝する。

「素晴らしい取り組みだと思います。多様性を求められる社会で、日本のスポーツ界ではマイノリティになるフェンシングが、自分を表現できる機会をサポートしていただけている。フェンシングという競技に出会い、練習を続ける環境があったから、今の自分がある。他の競技でも多くの人たちが可能性を広げるチャンスを得られていると思います」

 フェンシングは「僕の全て。この競技と出会い、学んだことで今を生きている。いい指導者と出会い、勝つ経験も負ける経験もたくさんしたから、自分という人間ができた」と言葉に力を込める。だからこそ、さらに多くの人に競技の魅力が伝わり、裾野が広がることを願っている。

「これまでも太田雄貴先輩や武井壮会長が普及のために色々なアイディアを出してこられた。その中で僕は、やはり道具が高価なことに弊害があると考えています。そこで今年1月から『折れ剣再生プロジェクト』を始めました。廃棄していた折れ剣を再利用して、メダルやタグプレートや越前打刃物に作り変えたり、様々なアップサイクル品へのチャレンジをしていますが、最終目標としては、剣に戻して、子どもたちが競技を始めやすい環境を整備しながら、普及していきたいと思います」

 自分の全てでもあるフェンシングを愛するからこそ、現役選手として研鑽を積みながら、普及活動にも力を入れていく。

(当記事は2022年6月に新型コロナウイルス感染症対策を行った上で取材・撮影を行いました。)

スポーツくじって何? スポーツくじは、アスリートやスポーツの未来を育てる仕組みです。 もっと、みんなが使えるグラウンドを整備するには? もっと、スポーツ大会や教室に参加できる機会を増やすためには? もっと、スポーツで世界をめざすチャンスを増やすためには? 「くじを買う」はエールになる。

もっと、スポーツくじについて、知るには?

スポーツくじの仕組みをアニメーションで紹介。

スポーツくじの仕組みに参加してみるには?

スポーツくじの販売サイトはこちら。

int_124_01

見延 和靖みのべ かずやす

1987年7月15日、福井県生まれ。小学校では空手、中学校ではバレーボールに熱中したが、フェンシング経験者でもあった父のアドバイスを受け、高等学校からフェンシングを始める。当初はフルーレとエペを両立していたが、大学進学後にエペに専念。NEXUS入社後にイタリアで単身武者修行に励むなど研鑽を積み、2015年には日本男子エペ個人でワールドカップ初優勝。2016年にはリオデジャネイロオリンピックの個人戦に出場し、6位入賞を果たす。その後も国際大会で優勝を重ね、2019年には世界ランキング1位&日本人初の年間王者に輝いた。東京オリンピックでは男子エペ団体で日本初の金メダル獲得という快挙を成し遂げた。

■スポーツくじって何? アスリートのためになる?
 スポーツくじの仕組みをもっと知りたい方は動画をチェック!

アンケートにご協力ください。

Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

とても理解できた
なんとなく理解できた
理解できなかった
Q2

スポーツくじ(toto・BIG)の取り組みに共感できましたか?

とても共感できた
なんとなく共感できた
共感できなかった
送信