東京パラリンピック後に増えたスタッフの数

　ローポインターズ大会で受けた刺激に続き、心に残っているのがデンマークを舞台とした世界選手権だ。炎で演出された入場口を通って選手が入場するなど演出に工夫が凝らされていたほか、日本のパラスポーツ界ではあまり目にしない場面に出会った。

「選手のプレーやレフェリーのジャッジに対し、普通のスポーツイベントみたいに客席からブーイングが起こるんです。興味を持っていただけるだけ嬉しいことですが、日本ではまだ『障がい者スポーツ』という見方が多いので、健常スポーツのようにブーイングが出ることは競技として認められているなという思いがしましたし、ブーイングが出るくらい会場を盛り上げられるプレーができるように頑張りたいとも思いました」

　スポーツくじの助成金は、スポーツ施設の整備や地域のスポーツ教室・大会、未来のトップアスリートの発掘・育成から車いすラグビーをはじめとするパラスポーツの普及・発展まで日本のスポーツの振興のために役立てられている。そんな、日本のスポーツを幅広く支える仕組みに、倉橋選手は「助成金によって大会を開催できたり、自分たちが成長できる機会をもらえたり。自分たちにはすごくうれしく、ありがたいことだと感じます」と話す。

　コロナ禍による無観客試合を経験し、客席の熱気が生み出す会場の雰囲気、観客一人ひとりから伝わる応援の気持ちに、以前にも増して深い感謝を抱くようになった。国際大会では現地の日本人在住者たちが客席に集まり、世界選手権では隣国のドイツや日本からの応援団も。「日本人サポーターの応援はすごく力になります」と笑顔を見せる。

　車いすラグビーには、応援以外のサポートも欠かせない。東京パラリンピックが終わった後、所属チームAXEには「パラリンピックを見て興味を持ったと新しくチームスタッフが入ってくれたり、見学に来てくれる方が増えました」と声を弾ませる。

「私たちは一人で車いすに乗ることができないし、グローブをつけることもできない。試合中にタイヤがパンクをしたらスタッフが対応し、選手が転倒したら起こしてくれる。選手を起こすのには時間制限のルールがありますし、サポートしてくれるスタッフと自分たち選手で一つのチームなんだと実感しています。選手はもちろん、スタッフも、一緒に関わる仲間が増えることがうれしいですね」

　車いすラグビーと出会ったことで、色々な人との繋がりが生まれ、色々な経験を重ねることができた。競技に関することにとどまらず、同じ障がいがある仲間から得るアドバイスで生活に工夫が生まれ、日々の暮らしも豊かになった。「自分自身の世界が広がったのは車いすラグビーのおかげ」。これからも競技に打ち込みながら、笑顔の毎日を送っていく。

（リモートでの取材を実施）

※スポーツくじの収益は、グラウンドの芝生化をはじめとしたスポーツ施設の整備、地域のスポーツ大会・教室の開催や未来のトップアスリートの発掘・育成など、日本のスポーツ振興のために役立てられています。

もっと、スポーツくじについて、知るには？

スポーツくじの仕組みをアニメーションで紹介。

スポーツくじの仕組みに参加してみるには？

スポーツくじの販売サイトはこちら。

倉橋　香衣くらはし　かえ

1990年9月15日、兵庫県生まれ。AXE所属。中学、高校と体操競技に打ち込み、教師の道を志して大学へ進学。トランポリン部に所属し、活動していたが、3年生の時に大会前の公式練習で技を失敗。頸髄を損傷して鎖骨から下の感覚が麻痺し、車いすユーザーとなった。大学復学を目指してリハビリ生活を送る中で出会った車いすラグビーに魅了され、2015年からクラブチームで本格的に競技を始めた。2016年に大学を卒業し、株式会社商船三井に入社。2017年には日本代表に選ばれ、唯一の女子選手として活躍。2021年の東京パラリンピックでは銅メダル獲得に大きく貢献した。

■スポーツくじって何？　アスリートのためになる？
　スポーツくじの仕組みをもっと知りたい方は動画をチェック！