私たちの街のGROWING

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災害からの復興をスポーツの力で支援「ふくおか元気プロジェクトin朝倉」

 2017年7月に発生した九州北部豪雨で甚大な被害を受けた福岡県朝倉市。こうした中で、福岡県・福岡県レクリエーション協会・朝倉市の3者は、毎年開催されてきた地域の駅伝大会を例年通りに開催し、「被災した地域の人々に元気を与えたい」とタッグを組み、2018年1月「ふくおか元気プロジェクトin朝倉」を開催しました。スポーツの力で地域を活性化させ、県民の幸福度上昇を目指す、福岡県の取り組みをご紹介します。

「スポーツ立県」で、さらに元気な福岡県に

 福岡県では、2011年4月に小川洋知事が就任以来、「県民幸福度日本一(県民一人ひとりが福岡県に生まれて良かった、生活してよかったと実感できること)」を目指して様々な施策を推進してきました。

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 2014年には「福岡県スポーツ推進計画」(計画期間は、10年間程度)を策定しています。この計画は、誰もが気軽にスポーツに親しむ環境の整備とスポーツを通した元気で活力ある県民生活や地域社会の創造を目指すというもので、これを発表した際に小川知事は次のようなコメントを発表しています。

 「スポーツは、体力の向上や健康の保持増進にとどまらず、青少年の健全育成や県民の皆さんの生きがいづくり、さらには、地域コミュニティの拡大など様々な価値や意義をもっています。県民の皆さんが身近な場所で気軽にスポーツを行ったり、観戦したり、主体的に参画したりすることができる環境を整備することは大変重要です。また同時に、スポーツを活用して人と人との交流を促し、地域の活性化を図っていくことも非常に重要なことです。」

 そして、2017年には、「県民幸福度日本一」への取組みをさらに加速させるため、県政推進の指針となる、新たな「福岡県総合計画」の中で展開する施策として「豊かな文化・スポーツを楽しみ、幅広い分野の国際交流を実感できること」を掲げ、「ラグビーワールドカップ 2019」、「2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催を、世界へ福岡県の魅力を発信する絶好の機会としています。
 さらに、2018年年始の会見で小川知事は「福岡県をさらに元気にする『スポーツ立県』を目指す」方針を打ち出し、県内で様々な事業が続々と生まれています。

 このようなスポーツを推進する流れの中、2018年1月には、福岡県・福岡県レクリエーション協会等によって組織された「スポーツフェスタ・ふくおか実行委員会」と朝倉市が主催する『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』が開催されました。このプロジェクトは2017年7月の九州北部豪雨で甚大な被害を受けた朝倉市において、スポーツの力で災害からの復興を支援する取り組みとなりました。

子どもたちのつなぐ“タスキ”を復興のシンボルに

 2017年7月に発生した九州北部豪雨は、福岡・大分両県に大きな被害をもたらしました。中でも福岡県朝倉市の被害は甚大でした。

 災害発生以降、朝倉市内で予定されていたスポーツイベント等はすべて中止となりました。また、公共のグラウンドや体育館なども物資倉庫や災害ゴミ集積所として利用され、一般への貸し出しがストップしました。そのため、スポーツ少年団等で活動する子どもたちは、「チーム練習が減ったので自主トレに切り替えた」「近隣の市町に活動場所を求めるしかなかった」と、災害によるこのような変化を受け入れざるを得ませんでした。

 それでも朝倉市の担当者は、地域における新年の風物詩として市民に定着した「平塚川添遺跡少年駅伝大会」を、なんとか例年どおり開催しようと奔走しました。開催予定時期は1月。災害発生から半年後にあたります。多くの行事が中止になった中で、「駅伝は実施する」と決断することに迷いもあったそうです。それでも、「朝倉は元気なんだ」と市民が実感するために、災害後初のスポーツイベントとしてこの駅伝大会ほどふさわしいイベントはないと考えました。

 なぜなら、この駅伝大会は、平塚川添遺跡が国の史跡指定を受けたこと(1994年5月)を記念して創設され、朝倉市および朝倉郡東峰村の小学生たちによって20年以上受け継がれてきた大会で、いわば地域の子どもたちが、次の世代へとタスキをリレーしてきたものだからです。また、駅伝は一人ではできません。一本のタスキをつないで、みんなの力を合わせてゴールを目指す駅伝には、走る人にも応援する人にも「一人じゃない」「仲間がいる」という気持ちに訴える力があります。だからこそ、子どもたちが「タスキをつなぐ」ことは、この地域において復興のシンボルと位置付けられたのです。

 また朝倉市の動きとは別に、福岡県としても、スポーツの力で「被災地域の方々に元気になっていただけるようなことをできないだろうか」(福岡県人づくり・県民生活部スポーツ振興課の原尻敏広係長)と、模索していました。そんな中、朝倉市が駅伝大会を実施する方針を固めたことを知った福岡県は、「この駅伝大会を復興支援イベントのメインに位置づけよう」という流れを支援し、『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』が行われることになりました。

 プロジェクトを主管した原尻さんは、実施の背景について次のように話しました。

「毎年恒例のスポーツ行事を(災害があったけれど)今年もやれる、ということに大きな意義が込められたプロジェクトだったと考えています。プロジェクトのベースとなった駅伝大会は子どもたちを対象としたものですので、『子どもたちの元気で一生懸命な姿は、朝倉に活気を取り戻してくれるはず』という強い思いを、市の関係者から感じ取りました」

スポーツの力で“つなぐ”、災害からの復興支援

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 2018年1月14日午前9時、号砲とともに駅伝第1区の走者がスタート。『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』は、多くの朝倉市民および東峰村民の参加と、県内外各地からNPOやボランティアの協力を得て、行われました。

 駅伝で使われたタスキには、今大会特別仕様となる「つなげよう 朝倉」の文字が刻まれ、約200人(男子25チーム×6人、女子9チーム×5人)の小学生によってつながれていきました。また、個人による「健康マラソン」の部にも、男女105人の小学生が参加し、このプロジェクトをサポートした日本スポーツ振興センター(JSC)からは、北京・ロンドンと2回のオリンピックに出場し、新体操選手として活躍したSPORTS JAPANアンバサダーの田中琴乃さんが駆けつけ、子どもたちと一緒に笑顔で走りました。

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 なお、駅伝大会の会場では、福岡の郷土料理「だご汁」の炊き出しがあり、大会に参加した小学生やその保護者など、来場者400人にふるまわれました。「炊き出しを担当してくれたのは、八女市のボランティア団体。県からこのプロジェクトのことをお伝えしたところ、ぜひ協力したいと快諾してくださいました」と、原尻さんは笑顔で語りました。炊き出し会場は大いに賑わい、だご汁を食べながら駅伝の頑張りをたたえ合うなど、来場者に“つながり”が生まれました。

 午後には会場を移して、田中琴乃さんとプロバスケットボールクラブ「ライジングゼファーフクオカ」所属の石谷聡選手・長島エマニエル選手によるトークショーと、福岡県レクリエーション協会による軽スポーツ体験会も行われました。被災地域の方々が健康についてあらためて考える機会を作り、元気な暮らしへ“つなげる”支援となりました。

 来場者からは「運動はリフレッシュにもなるから生活に必要だと思った」「スポーツイベントにもっと参加したい」「災害後に運動を始めたが、一緒に取り組める仲間がほしい」などの声が寄せられました。避難行動や避難生活を通じて、健康・体力を維持することの重要性や、スポーツの気晴らし効果を実感したようでした。また「災害後、子ども達の元気の良さに、自分も元気をもらっている気がしている」という感想もあり、子どもたちを主役としたスポーツイベントが、地域の大人たちの心の支えになるということも、あらためてクローズアップされたと言えるでしょう。

「来場した方たちの中には、直接被災した方々や、災害発生後に不自由な生活を強いられた方々もいらっしゃいました。その方々が災害を忘れることができたと言ったら言い過ぎでしょうけれど、少なくとも、参加している時間はスポーツに没頭できたのではないかと思っています」(原尻さん)

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 また、『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』が無事に実施され、大いに盛り上がった理由として「欠かせなかったもの」については、次のように語りました。

「携わった人たちの熱意です。朝倉市のスポーツ行政担当者も、災害発生以降はスポーツ以外の業務で多忙を極めたと聞きます。そのような状況でも、担当者の方々は『スポーツの力を復興に活用したい。スポーツで元気になってもらいたい』という熱い思いを持っていました。私ども県のスポーツ振興課としましては、県自ら主導してイベントを打ち出したという意識はありません。朝倉市の担当者、駅伝大会関係者、市民の方々、ボランティアの方々、たくさんの思いをつなぐこと。私どもはその役割を担ったにすぎません」(原尻さん)

スポーツには、希望を灯す力がある

 『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』は、多くの人が「誰かのために、力になりたい」という思いを行動に移したことで実現しました。助け合う精神が、スポーツの力で結びついたと言えます。同時に、こうも言えます。福岡県は日頃から数々のスポーツ振興施策を通じ、「助け合う精神」を養い、活用してきた、と。

 冒頭で触れた「福岡県スポーツ推進計画」は、スポーツ推進を図る上で踏まえておくべき観点の一つとして「共助社会の進展」を挙げ、県民のスポーツ活動を企業、NPO、ボランティアなどと行政が協働して支えることを目指しています。『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』に、多くの人々の熱い思いが自発的に集まってきたのも、福岡県が日頃からこのようなビジョンのもとスポーツ振興に力を入れているからこそといえるでしょう。『ふくおか元気プロジェクトin朝倉』の取組を通じて、「スポーツには、希望を灯す力がある」というメッセージを残したと言えそうです。

*福岡県が取り組む、復興支援に関わるスポーツ関連イベント

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① 被災者にレクリエーション活動の機会を提供
福岡県レクリエーション協会に働きかけ、2017年7月28日から8月20日に東峰村で計10レクリエーション活動を実施。延べ約500人の住民が参加。

② 復興応援旗の掲示
日本を代表する多くのアスリートが寄せ書きした「復興応援旗」を、県庁ロビーに掲示。被災地にはレプリカを寄贈。

③ 東京2020オリンピック・パラリンピックフラッグツアーのフラッグ歓迎イベントの実施
2018年1月9日から2月4日にかけて県内巡回するフラッグツアーの出発地を朝倉市とし、歓迎イベントを開催。朝倉市立久喜宮小学校体育館において児童・保護者約300人を招待。

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