私たちの街のGROWING

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私たちの街のGROWING

地元の子どもから日本代表選手まで集う、下川町のノルディックスキー大会

 毎年12月28日、北海道の小さな街に、全国から、世界から、人々が集まります。目指すのは、下川町で開催されている「全道ノルディックスキー競技大会」。「スキージャンプ」・「クロスカントリースキー」・ジャンプとクロスカントリーの2つを組み合わせた「コンバインド」の3種目からなるこの大会は、地元の子どもたちから、公益財団法人全日本スキー連盟が選出した強化指定選手まで幅広い選手が集まり、冬季オリンピック競技でもあるノルディックスキー振興の一翼を担っています。自身もスキージャンプの選手として、ワールドカップに出場し、現在は北海道下川町教育委員会教育課の職員として大会の運営に携わっている伊藤克彦さんに、大会開催にかける想いについて伺いました。

初心者もトップアスリートも。一緒になってノルディックスキーを楽しむ

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 「がんばれー!」
 真冬のスキー場に熱い応援の声が響きました。子ども用に手作りされたなだらかなジャンプ台を飛ぼうとするのは、幼児や小学生の子どもたち。家族が見守る中、臆することなく次々と飛び出していきます。一生懸命飛ぶ姿に周りからも思わず歓声が上がります。
 隣のジャンプ台で、勢いよく空に飛び出していくのは、地元のジャンプ少年団の選手や、全国から集まった有数の選手たち。過去には、オリンピックに出場経験がある日本や韓国の選手も大会に参加しました。
 またジャンプ台のそばには、町の地形を活かし、アップダウンに富んだ本格的なクロスカントリーのコースが設けられ、真っ白な雪の丘をカラフルなウェアを着た選手たちが颯爽と駆け抜けていきます。

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下川町教育委員会教育課 伊藤克彦さん

 「下川町に訪れる人を増やすために始めたこの大会は、今年で35回目。今ではすっかり冬の風物詩となっています。大会のジャンプコースは、小学生が飛ぶミニヒル、小学校4年生以上が飛ぶK点(ジャンプ台の建築基準点。この距離より跳ぶと危ないとされる)26m、中学生以上が飛ぶK点40m、主に高校生以上が飛ぶK点65mの4種類あります。クロスカントリーのコースはちびっこの部の600mから5kmのコースまであり、2019年の大会では雪不足の影響で3㎞に縮めることになりましたが、約400人が参加しました」

 「参加者の中には今年スキーをはじめた地元の5歳の子どももいますし、本州から参加した強化指定選手もいます。トップレベルで活躍が期待される強化指定の選手が参加する大会に、子どもも一緒に出場できるなんてなかなか無い機会ですよね。第一線で活躍する選手の競技を間近で見て刺激を受けることができますし、選手同士で良い交流が生まれることもあります」と語る伊藤さん。

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 大会の参加者に話を聞くと、スキージャンプに出場していた小学生の女の子は、「初めての大会の時は、飛ぶのが怖かった。でも練習をしてどんどん飛べるようになって大会が楽しみになってきた」と、明るい笑顔で語ってくれました。北陸から参加した選手からは「他の選手との情報交換の場にもなるから良い経験になる。この大会に参加しないと年を越せないんだよ」との言葉が。大会を楽しみにしているのは、選手だけではありません。今日の大会のために、朝5時に起きて札幌から応援に駆けつけたという方もいらっしゃいました。

大会の開催を支える3つの条件

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 下川町は札幌から約200km、旭川からは約100km。決してアクセスが優れているとは言えませんが、大会には多くの選手が集まります。ノルディックスキーの会場に適した環境が備わっているからです。
 1つ目の条件は、恵まれた自然環境です。
 「下川町は北海道の中でも北の方に位置し雪が多く降りますが、冬の晴天率が高く、比較的天候が安定しています。風や雪などの天候に左右されるノルディックスキーには、ちょうどよい環境なんです」

 2つ目は、多彩な競技コースがあることです。
 「ジャンプ台・スキー場・クロスカントリーコースが同じ会場にまとまってあり、ジャンプ台は4基もあります。その中でも珍しいのが子ども用のジャンプ台。実はこのジャンプ台は、同じくスキージャンプの選手だった私の父が、ブルドーザーを使って手作りしたんです。最大でも10m飛べるほどの小さなものですが、子どもたちにスキージャンプの楽しさを感じてもらうきっかけになりますし、大会では子どもたちの練習の成果をお披露目する絶好の場所になっています」

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 3つ目は、地元の方々のあたたかい協力があることです。
 「大会には地元の多くの方が協力してくださり、その数はボランティアの方だけで約130人にのぼります。人口約3,200人の町でこれはすごいことですよね。地元の小学校・中学校・高校の先生や、役場の方や自衛隊の方などが、毎年一丸となって大会を支えてくれるおかげで、選手のみんなが競技に専念できるんです。大会にあわせてスキー合宿に来る選手も増えてきましたが、それも地元の方の理解があってこそですね」

 地元の方々に支えられて、大会は2019年に35年目を迎えることができました。
 「設備や準備が必要なスキージャンプやクロスカントリーは、北海道の中でも経験したことがない人が多くいます。そのような環境が近くにない選手にとっては、この大会は自分の実力を試せる貴重な場です。そういった意味でも、この大会をこれからも続けていきたいですね」

 大会を続けるにあたって大変なのが、ボランティアの方々への仕事の割り振りです。約130人の適性やバランスを考えて、一人ひとりにしっかり当てはまる人員配置をしていかなければなりません。特に難しいのが、クロスカントリーのタイムを計測する仕事でした。

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 「クロスカントリーでは、200人以上の選手が20秒ごとに時間をあけてスタートするため、ゴールの到着時間もバラバラ。何番のゼッケンの選手が、何番目に何分のタイムでゴールしたかどうかを、正確に計測しなくてはいけません。そんな専門的な計測を、ルールを一から説明して地元の方にお願いしていましたが、年々参加人数が増えたことで測定が難しくなっていました。そこでスポーツくじ(toto・BIG)の助成金を活用して、今までボランティアにお願いしていたタイム測定を、専門家にお願いすることにより正確性を高めることができると思ったんです。助成金を活用することで、競技の質も高まり大会を充実させることができました」

夢は、ノルディックスキーの楽しさを広めること

 これからは、もっと多くの方に楽しんでもらえるような大会にしたいと語る伊藤さん。大会に子どもが参加できる種目をつくったのも、年齢関係なく競技を楽しんでほしいという想いからだと言います。
「下川町の子どもたちにとっては、放課後に野球をすることと同じくらい、スキージャンプは身近なスポーツなんです。大会ではその憧れの選手が、自分たちの街にやってきてみんなの前で迫力ある競技を披露し合います。元々、下川町ではスキージャンプが盛んですが、大会を通して街に1人でも多く、その楽しみを感じる人が増えたらうれしい」
 さらに、世界の方にも楽しんでもらえる大会にしたい、と夢は広がります。
「今までは選手たちの間で口コミで評判が広がって参加者が増えてきていました。ゆくゆくはインターネットで情報発信して、韓国や中国などもっとアジアの選手に来てもらえるような国際的な大会にできたらおもしろいですね」
 国内さらには世界の選手が本格的な競技を繰り広げる隣で、子どもたちはノルディックスキーの楽しさを発見する。そんな2つの魅力を併せ持つ大会を目指して、これからも多くの選手がこの街に集うことでしょう。

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