インタビュー記事

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その他

創意工夫が生んだ大飛躍 一矢に込めるパラスポーツ普及への想い(2/3)

独学で作り上げた射形の基礎、幅を広げた強化指定選手としての学び

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 まず取り組んだ課題は、弓をどうやってホールドするか。握力がなく弓を持てないためベルトで手に固定するが、強すぎても弱すぎても矢は放てない。さらには、体幹が保てないため身体を車いすに固定させる必要がある。弓を引いた時に弓を持つ右手側に身体が傾くのを防ぐため、ベルトの位置や掛け方を試行錯誤した。

 弓はオリンピックでも使用される一般的なリカーブと、両端に滑車がついたコンパウンドの2種類がある。岡崎選手はより小さな力で引き続けられるコンパウンドを使用するため、矢を発射する時にリリーサー(コンパウンド用の発射装置)という道具を使う。このリリーサーもまた様々な種類があり、自分に合ったものを探り当てるまでが一苦労だった。

 当初は「弓は持てないし引けないし、あまり楽しさはなかったんですよ」と正直に明かす。初心者クラスに通ったものの、ほぼ独学。動画サイトで世界中のパラアーチェリー選手の動画を検索し「片っ端から見ました」。どういう風に弓を引いているのか。アンカーと呼ばれる引き手はどの位置まできているのか。どうやって身体を固定しているのか。どんなリリーサーを使っているのか。「自宅で自分の射形(弓を射るフォーム)を動画に撮って見比べたりしながら、いろいろ研究しました。本当に動画サイトのおかげです」と笑うが、相当量の努力と意志の強さがない限り、パラリンピックの舞台にはたどり着けない。

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 ようやく身体を車いすに固定するベルトの位置と射形が定まり、筋力トレーニングの効果を感じられたのが、競技を始めてから4年が過ぎた頃だった。2018年秋、初心者用の弓から安定感と重みのある競技用の弓に変えると「いきなりスコアが80点くらい伸びたんです」。大会でも好成績を収め、ついには強化指定選手になった。「この頃から、もう少し弓に慣れれば国際大会に出られるかもしれない」と手応えを感じ始めていた。

 独学ながら安定した射形が身についていたため、競技用の弓に慣れるまで早かった。強化指定選手になってから初めて日本代表コーチにアーチェリーの基礎を学び、目から鱗が落ちる経験もした。例えば「弦サイト」。アーチェリーでは弓を引いた時、弓についたサイト(照準を定めるための道具)を使って的の狙いを定めるが、同時に鼻先に見える弦と的との位置関係を一定に保って狙いの精度を高める。これを「弦サイト」と呼ぶが、岡崎選手は「強化指定選手になるまで知らずに感覚で射っていたので、こうすればもっと狙いやすかったんだと(笑)」。独自の学びにセオリーが加わると、選手としての幅が一挙に広がった。

 競技用の弓に変えた翌年には、オランダで開催された世界選手権の混合団体(W1)で銅メダルを獲得。目標とした東京パラリンピック出場を内定させた。

 東京パラリンピックには両親や練習仲間など、様々な人の想いを受けて臨んだ。だが、弓を引く時、頭に思い浮かべることは一つだけ。弓を最後までしっかり引き切ることだ。

「あまりいっぱい考えると、迷ってしまって、思いきり矢を放てなくなってしまうんです。心の迷いが矢の走りに出てしまうし、リリースのタイミングもずれる。アーチェリーって結構、勇気が大事なスポーツなんです」

 対戦相手との間に漂う緊張感もたまらない。個人戦では1エンドにつき3射(30点満点)を放ち、5エンドの合計得点(150点満点)で競うが、1射を30秒の制限時間で交互に射る。「自分と相手の点数が分かる中で引き合う。その緊張感は見ている方にもすごく面白いと思います」と目を輝かせる。

◆障がいの有無に関わらず同じ土俵に立てる「本当にバリアフリーなスポーツ」