インタビュー

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5大会出場オリンピアンが未来に伝えたい スキー競技の魅力と学び(2/3)

フリースタイルスキー・モーグル 上村愛子さん

色褪せない長野大会での経験、夢を持てたオリンピックという舞台

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 上村さんが専門としたモーグルもまた、コブが並ぶバーンを滑り降りながら2度のエアを決めるという高度な技術を要する競技だ。中学2年でモーグルと出会った時、「こんなに真っ直ぐコブを滑る技術があるんだ」と好奇心を刺激されたと振り返る。

「小さい頃からスキーをしていたので、ゲレンデ内で滑れない場所があまりなかったんです。ただ、コブだけはちょっと苦手だったので、この技術を身につけてみたいという気持ちで始めました。コブをあんな風に滑る人はあまりいないので、ゲレンデでも一番目立つ。(不得意を得意に変える)楽しさを持ちながらできるだろうと選んだ競技でした」

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 実際に始めてみると、楽しいばかりではなく苦しむことも多かった。それでも前向きにチャレンジし続けたのは、モーグルコミュニティの絆の強さにある。

「モーグルは全長250メートルくらいのバーンで、スタート地点からゴールまで見渡すことができます。会場には音楽が流れたり、観客の皆さんの応援が耳に届いたり。その環境に私はすごくワクワクするタイプ。選手たちはみんなライバルですし、オリンピックではメダルの争いにもなりますが、それでもコブのある難しいバーンをそれぞれ一生懸命練習して、今回は誰が一番上手に滑れるだろうかと競う楽しさがありました。選手同士も仲がいいですし、お互いに『あなたの滑り良かったわよ』と声を掛け合うコミュニティが好きでしたね」

 2014年ソチ大会を最後に現役引退するまで、オリンピックに5度出場した上村さん。それぞれの大会が語り尽くせないほどの思い出で溢れているが、中でも忘れられない経験をしたのは初出場した1998年長野大会だったという。

「長野は色褪せないですね。目の前で里谷多英さんが金メダルに輝いて、本当にみんなが笑顔になった。それが、あとの4大会で私がメダルを目指し続けた大きなモチベーションになりました。なんで自分がメダルを獲りたいか、その答えを最初に里谷さんが見せてくれたんです。その経験がなければソチまで頑張れなかったかもしれない。自分が一生懸命やっていることで、支えてくれている方々、ファンの方々、みんな一緒に喜べるのがメダル。そのためにもメダルが獲れる活躍をしたい。そう思えた忘れられない経験です」

 世界選手権、ワールドカップなど国際大会は数あれど、上村さんにとってオリンピックは特別な大会だった。4年に1度やってくる世界一決定戦があったからこそ、長い現役生活を続けることができた。

「私にとってはオリンピックという舞台があるからこそ、夢を持てました。4年に一度のオリンピックという大きな目標が常にあったので、途中で上手くいかなくて迷うことがあっても、諦めてなるものかという気持ちになれました。オリンピックがなければ世界一になりたいと思わなかったかもしれません。滑ることが楽しいというベースの上に、競技としてのライバルがいて、勝ちたいと思える場所があるから、4年ごとに成長した自分で戦いたいと自分を高められたと思います」

◆次ページ:日本で国際大会の開催を「子どもたちに必要なビジョンを見せてくれる」

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