インタビュー

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インタビュー

全日本の若き主将が背負う責任感 「苦しい時に一歩前に踏み出せる選手に」

ヨーロッパでプレーして変わったバレーボールへの価値観

 全日本男子バレー界の将来を担う存在だ。柳田将洋選手は、端正なルックスには似つかわしくない、強烈なサーブをコートへ突き刺す。186センチとバレーボール選手としては大柄ではないが、高い打点からのスパイクは相手にとって脅威の対象だ。昨年からプレーの場を海外に移し、いまなお成長を続けるバレーボール界の“プリンス”は、“龍神NIPPON”(全日本男子バレーボールチームの愛称)のキャプテンとして、目前に迫った2018男子世界選手権(9月9日開幕・イタリア、ブルガリア)へ向けての決意を語った。そして心の内に秘めるプロ意識を垣間見せた。

 全日本をけん引する主将。大きな期待を背負う26歳は、2020年に控える東京オリンピックへ向けた大事な前哨戦である、9月の2018男子世界選手権へ向けて、静かに、そして力強く誓った。

「常に上を目指すのが僕たちの目標。メダル獲得です。高いところを目指したい。初戦から力を出せるように、良い結果を常に頭に描きながら試合に臨みたいと思っています」

 今季は6月のネーションズリーグで強豪イタリア代表に11年ぶりに勝利。7月末に行われた韓国との親善試合では2連勝と、結果も出始めている。

 そんなチームの中心を担う柳田選手は、海外での経験を通じて、心身ともに成長を遂げた。2017年にV・プレミアリーグのサントリーサンバーズから、ドイツ・ブンデスリーガ1部のバレーボール・バイソン・ビュールへ移籍。ステップアップのための大きな挑戦だった。

「日本代表でプレーする中で海外の長身選手と対峙してきた。自分がレベルアップするためにも、同じコートでプレーしたいという気持ちが強くなっていきました。海外でプレーできるチャンスがあるのなら、まずはトライしてみようと」

 バレーボールの本場ヨーロッパでのプレーを通じて、自らのバレーボールに抱く価値観も変わった。日本の実業団でのプレー環境が、いかに恵まれているかを痛感したという。

「日本の方がサポートもしっかりしていて、不自由なくプレーできていました。ドイツのプロのクラブチームに実際に入って、クラブの活動というものに衝撃を受けました。自分たちの活動はすべて、(スポンサーも含めた)クラブの持っている“お金”の中でやりくりしなければならない。食事や、治療面、移動も含めてです。今まで日本ではすごくサポートされた中でやってきたのだなと、改めて思いました」

 また文化の違い、言葉の違いにも戸惑った。日本人の感覚が全く通用しなかったと、移籍当初を振り返った。

「想定はしていましたが、体感してみると……。クラブの共通言語は英語なのですが、最初は全然できなかった。聞く方は多少できたのですが、話すことができなくてうまく意思を伝えることに苦労しました」

 それでも環境が人を変える。半年で日常会話はマスター。特別なレッスンは受けずとも、日常の中で習得していった。チームメートと食事に行けば、積極的にコミュニケーションを図った。またプレー中の会話も大事にしてきた結果、気づけば困ることはなくなっていた。

理想のキャプテン像はサッカーの長谷部誠選手、「苦しい時に下を向かずに…」

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 ドイツに移籍して約1年。ようやく慣れてきたであろうタイミングで、今度はポーランドリーグへの移籍を決断した。ドイツよりもさらに、レベルの高いリーグに身を置くことを選択した。

「ドイツにせよ、ポーランドにせよ、やることは変わらないです。クラブに(所属する選手)はポーランド人だけではないですし、言葉はしっかり英語で伝えれば理解してもらえる。ドイツでもある程度対応できたのだから、どの国でも対応できると思っています」

 飄々(ひょうひょう)とした受け答えの中にも、意志の強さが見え隠れする。もともとが強いキャプテンシーの持ち主。ドイツでも加入後すぐに主将を任された。思うように言葉が伝わらない中で、どうチームをけん引したのだろうか。

「その時に自分が持っている言葉で話し続けることですね。回り道してでも、言葉が伝わるように、長くなっても話し続ける。話さなくなると、自分がどういう人間で、何がしたいのかも伝わりませんよね。だから良いことでも、悪いことでも必ず言うようにしました。チームメートから嫌な顔をされることもありましたが、大事なことだと思ってやっていました」

 今季からは全日本でも主将を任せられることとなった。柳田選手がイメージする、理想のキャプテン像とはどんなものなのか。サッカー日本代表で長きに渡って主将を務めた長谷部誠選手からも影響を受けたという。

「信頼される存在になることですね。苦しいときに一歩前に踏み出せる選手。周りが苦しい時に下を向かずに、そこで声を掛けられたり、自分が苦しい時でも(苦しさを)見せてはいけないと思います。サッカーのワールドカップも見ていました。(長谷部選手が)今大会を機に日本代表を引退されるというニュースも見た。何年も前からずっと、長谷部さんの姿を見てきましたが、日本代表のキャプテンの重圧は計り知れないものがあると思います。そんな中でも、最後の最後まで重圧というものを見せなかった。本当に尊敬できるなと見ていて感じました」

 競技は違えど、主将として日の丸を背負うということは同じ。重圧は想像を絶するものだ。それでも柳田選手は「僕にとってはいいモチベーションになりました」とプラスに変えて、正面から向き合っている。

「周りの人に支えられていると思います。常に感謝しているし、だからこそやれるんだと。とにかく自分がやろうと思うことをやって、キャプテンとして言うべきところはきちんと言う。周りも自然と助けてくれると思う。キャプテンをやるからには、しっかり引っ張っていけるように意識してやっていきたいです」

柳田選手が持つ“プロ意識”はバレーボール界の将来のために―

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 主将としての責任だけではなく、バレーボールという競技の将来を俯瞰しながら見据えている。憧れてもらえる選手になりたい。柳田選手の意識の中には、常にその思いがある。

「どういうアプローチでバレーボール人気を高めていくのか、日本代表でプレーしている身としては責任も感じます。何より色々な人に観てもらって興味を持ってもらうこと。どういう形であれ、なるべくたくさんの人に、バレーボールという競技を観てもらう方法を考えるべきだと思っています。色々な形で子どもたちに夢を与えられるように、できればいいなと」

 その一つがSNSを使った積極的な発信だ。それも現在の男子バレーボールを担う者としての自覚から来ている。

「バレーボーラーとしての姿を、見せられる時に色々な形で発信していけたらいいと思っています。SNSしかり、試合の姿もしかり、色々な形があります。僕らはあくまでアスリートなので、僕らが普段どういう練習をしているだとか、まずはそういう側面を出していって、かつ普段の姿もプラスアルファで出していければいい。日本代表のことをいつも気にかけてくれるファンの方がいる。そういう方に何かしらを発信していければいいと思っています」

 たとえ端末の画面上での繋がりだとしても、それをきっかけにバレーボールに興味を持ってくれるファンが出てくるかもしれない。そんな取り組みがファンを増やし、将来的な競技の普及、発展につながる。

 バレーボールの普及・発展を支えているものの中の一つに、スポーツくじ(toto・BIG)の収益による助成金がある。例えば、Vリーグのジュニア選手権大会の開催や小中高生を対象とした長身選手の発掘育成事業等に役立てられている。柳田選手はバレーボールの更なる普及・発展を見据え次のように語った。

「日本は恵まれた環境でやれているのは間違いありません。アンダーエイジカテゴリーにまでサポートしてくれる(スポーツくじの)助成金のようなシステムは本当にありがたいことです。トップでプレーしている僕らは、そういったサポートに感謝してやらなければいけない。改めて気が引き締まります。僕らからアンダーエイジカテゴリーにも伝えていく必要があります」

 感謝の気持ちを持って挑む世界との戦い。最後に自身の、そしてバレーボールという競技の“ここ”を観て欲しいとアピールした。

「常に点が入りますし、次はどうなるのか、考えながら観られる面白い競技です。20点を超えた痺れるような状況でどういうことが起こるのか。観ている側も緊張すると思いますし、土壇場で起こるプレーにも注目してもらいたい。そして実際に会場で観て欲しいですね。サイド側から観るのと、エンド側から観るのとでは、全然観え方が違うんです。子どものころ、実際にエンド側から世界大会を観て、世界の選手のサーブがこんなに速いのかと、びっくりした記憶があります。僕自身で言えばサーブが強みですし、各選手の強みを理解した上で、観てもらえると注目しやすいのかなと思います」

 まずバレーボールに少しでも興味をもってもらい、楽しさを知ってもらうこと。それがバレーボールの更なる発展に繋がると信じ、柳田選手は世界の舞台に立ち自ら発信し続けていく。

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柳田 将洋やなぎだ まさひろ

1992年7月6日、東京都江戸川区生まれ。ポーランドリーグ・ルビン所属。ポジションはアウトサイドヒッター。親の影響でバレーボールを始める。東洋高等学校(東京)では2年時の春の選抜大会で優勝。卒業後は慶應義塾大学に進学し、2013年に全日本メンバー入り。2015年にV・プレミアリーグのサントリーサンバーズに入団。2015-16シーズンは全試合に出場し、最優秀新人賞に輝いた。2017年4月にサントリーサンバーズを退団。同年6月にドイツ・ブンデスリーガ1部のバレーボール・バイソン・ビュールに移籍。2018年4月に全日本男子の主将に就任。7月にポーランドリーグのルビンへの移籍が発表された。

[JVA2018-08-14]

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