インタビュー

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インタビュー

「ラグビー文化を根付かせたい」 日本代表の若きキーマンが語る憧れの舞台

日本代表入りから約2年「もう30歳になったんちゃうかな?と思うくらい、濃い2年だった」

 9月20日。いよいよラグビーワールドカップ2019™日本大会が幕を開ける。開幕戦は日本対ロシア。全世界を代表する20の国と地域が火花を散らす夢舞台に、初めて足を踏み入れる若武者がいる。日本代表「ブレイブブロッサムズ」でフランカー(FL)とナンバーエイト(NO8)を務める姫野和樹選手だ。「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」というキャッチコピーのとおり、自国で開催されるワールドカップに向けて、今、何を思うのか——。

 愛知県名古屋市に生まれ育った姫野選手は、高校時代にはフィジカルが強い選手として頭角を現した。3年生の時には“飛び級”でU-20日本代表や、日本代表の将来を担う若手育成プロジェクト「ジュニア・ジャパン」に選出。早くからラグビー界にその名を轟かせていた。大学進学後は怪我に泣かされることも多かったが、4年生の時には大学選手権8連覇に貢献。卒業後は、地元・愛知に拠点を置くトヨタ自動車ヴェルブリッツに加入し、入部1年目からキャプテンを務めている。

 2015年に行われたワールドカップ・イングランド大会。姫野選手は当時、大学3年生ながら日本代表候補として合宿に参加したが、最終メンバーからは漏れた。待望の日本代表デビューは、その2年後、2017年11月4日に行われたオーストラリア戦まで持ち越された。そこからは日本代表の常連メンバーとなり、代表キャップ数を重ねるたびに飛躍的に成長。目標としてきたワールドカップの舞台は、すぐそこまで迫っている。

 初キャップからワールドカップ開幕戦まで約2年。これまで代表として重ねた日々について聞くと「早かったと思えば早かったし、遅かったと思えば遅かったし…」と笑った後に、こう続けた。

「この2年でたくさんのことを見てきたし、経験してきた。今年25歳なんですけど、もう30歳になったんちゃうかな?と思うくらい、年を取った感じもするし(笑)。それくらい濃い2年間ではありましたね」

経験を重ね、深めた自信「日本のラグビーのレベルが上がってきているのを実感している」

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 合宿を重ねながらチームとしての結束を強め、世界を知るトップ選手たちと切磋琢磨する。日本代表として強豪国とテストマッチを行ったり、代表候補で結成されるサンウルブズやウルフパックに参加しながらスーパーラグビーで海外チームと対戦することで、経験値を高めた。その中でチームとしても個人としても、大きな手応えを掴んでいるようだ。

「早い展開が日本のラグビー(の特徴)なので、スピードの部分では世界に必ず通用すると思っています。練習の中でも速さを意識していますし、あとはフィジカルの部分で相手に負けないようにしないといけない。ただ、個人的には日本はフィジカルでも世界に負けていないと思うんです。昔からウイークポイントとされてきましたけど、強みに変わりつつあるんじゃないかと」

 姫野選手がプレーするFLとNO8は、タックルで敵を倒すフィジカルの強さ、試合を通じて誰よりも速くボールの元へ駆け寄るスピードと持久力が求められる過酷なポジションだ。圧倒的な運動量を求められるだけに、屈強な海外選手との体格差を感じることもあるかと思いきや、「そんなに感じないですね」と言い切る。

「日本のラグビーのレベルが上がってきているのを実感していますし、僕もこの2年間で成長できたと自信を持っています。相手より劣っているとは思わないですね。思わないようにしないといけないですし、相手より強いんだという自信を持たないと相手に飲み込まれてしまう。臆さずやることが大事だと思います」

 南アフリカを34-32で破る大金星を挙げるなど3勝を飾った前回大会。その後、ヘッドコーチ(HC)こそエディー・ジョーンズ氏からジェイミー・ジョセフ氏に交替したが、ジョーンズHCが日本ラグビー界に与えた意識革命と成功体験は、今なお代表チームに脈々と受け継がれている。日本代表が着実にレベルアップする中で迎える日本大会。その憧れの舞台に立つ自分自身の姿を、姫野選手はしっかりイメージできているのか。

「(ワールドカップの舞台に)立ってますね、はい。でも、先のことを考え過ぎると今が疎かになってしまうので、あまり考えないようにはしていますけど、すごく楽しみですね。そのワールドカップで結果が残せなかったらどうしようとか不安になる時もありましたけど、この2年間で自分に自信がついたことによって余裕ができて、今は楽しみな気持ちの方が強いです。自信を持って臨むためには、プロセスと結果が大事だと思っています」

「ラグビー文化を日本に根付かせたい、と僕はすごく思っています」

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 今回、大会の開催には、スポーツくじ(toto・BIG)の収益による助成金が役立てられている。世界のトップが集結するワールドカップが日本で開催される意義について、姫野選手はこう熱く語った。

「イギリスに行った時、日本ではラグビーがまだ認知されていないのを感じました。2015年大会の活躍をもってしてもまだ、認知が伸びきっていないのが現状だと思います。イギリスで感じたラグビー熱の大きさは、日本とは全然違うものでした。ラグビー文化を日本に根付かせたい、と僕はすごく思っています。根付かせるためにワールドカップという大事な大会がある。大会を通じて、さらに日本代表の結果を通じて、日本で多くの方にラグビーの素晴らしさ、魅力を知ってもらいたい。それが自分のゴールですね。ラグビーという文化を根付かせるためにも、僕らがしっかり結果を出さないといけないと思います。

 ラグビーって面白いスポーツだと純粋に思いますし、ラグビーの文化が好きです。仲間を大切にするとか、規律を守るとか、相手をリスペクトするとか、そういったことを公言しているスポーツはなかなかないと思うので、その文化が好きですね」

 日本代表の活躍に心奪われ、1人でも多くの子どもがラグビーボールに触れ、桜のジャージを目指してほしい。そんな想いを抱く姫野選手は、ワールドカップが終わった後もラグビー教室などを通じて、競技の普及や育成に関わりたいと考えているという。

「身近にラグビーというスポーツに触れ合える場所が必要ですよね。今、自分は日本代表になって、子どもたちに夢を与える立場にある。僕がラグビーのアカデミーに顔を出したり、練習で教えたりすることで、1人でも多くの子どもたちが日本代表になりたいと思ってくれればいいなと思うので、そういう活動もしていきたいですね」

 いざ、ワールドカップの舞台に立てば「相当緊張するだろうし、会場の雰囲気もすごいだろうなと思います」と初々しさも覗かせるが、同時に「僕たちの真価が問われるところ」と覚悟も決めている。9月20日から始まる熱戦の日々。日本代表の活躍で前回大会にも増して大きな旋風が巻き起こることを期待したい。

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姫野 和樹ひめの かずき

1994年7月27日、愛知県生まれ。トヨタ自動車ヴェルブリッツ所属。ポジションはフランカー、ナンバーエイト。日本代表キャップ数9(2019年7月24日現在)。中学生でラグビーを始め、春日丘高等学校時代に頭角を現し、高校日本代表、U-20日本代表、ジュニア・ジャパンなどに選出される。帝京大学では大学選手権8連覇達成に貢献。卒業後はトヨタ自動車ヴェルブリッツに加入し、入部1年目からキャプテンに任命され、チームをけん引している。2017年11月4日に行われたオーストラリア戦で日本代表デビュー。以来、日本代表に欠かせない若き戦力として存在感を光らせている。

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