インタビュー

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インタビュー

日本代表の快進撃を支えた原動力 元代表2人が語る「積み上げ」と「育成」

『「エール」is Power スポーツくじがつなぐ、新しい応援のカタチ展。』のトークイベントで「応援」に感謝

 9月20日に開幕したラグビーワールドカップ2019™日本大会は11月2日、南アフリカの優勝で幕を下ろした。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)率いる日本は、プール戦でアイルランド、スコットランドといった強豪国を破り、4戦全勝で1位通過。準々決勝では惜しくも南アフリカの前に敗れたが、史上初のベスト8という快進撃で、日本ばかりか世界を興奮の渦に巻き込んだ。また、試合会場の客席やファンゾーンはもちろん、街の至る場所でラグビージャージを着た様々な国の人々が国境や言葉の壁を越えたコミュニケーションを図るシーンが見られ、大会そのものも大成功を収めた。

 ワールドカップで火がついたラグビーフィーバーを大いに喜ぶ男たちがいる。元ラグビー日本代表主将で2011年ニュージーランド大会に出場した菊谷崇氏と、2015年イングランド大会で南アフリカを撃破した“ブライトンの奇跡”のメンバーで、現在もジャパンラグビートップリーグ所属の「クボタスピアーズ」で活躍する立川理道選手だ。2人は10月19日、東京の二子玉川ライズ・ガレリアで開催されたスポーツくじ(toto・BIG)主催イベント『「エール」is Power スポーツくじがつなぐ、新しい応援のカタチ展。』のトークイベントに出演。ファンから届く声援、スポーツくじの助成による支援などの様々な応援のカタチについて、アスリートの立場から語った。

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 10月18、19日の2日間にわたって開催されたイベントは、100円から購入できるスポーツくじの収益による助成金が、どういうカタチで日本のスポーツやアスリートを応援しているのか、アトラクションやステージイベントを通じて体感ができるもの。家族連れや友人連れなど幅広い層の人々が会場を賑わせた。

 閉幕後は「ラグビーロス」という言葉が登場するほど、日本中が熱中したラグビーワールドカップだが、元代表の2人はどう受け止めたのか。

 9月20日の開幕戦、日本対ロシアから4日連続で各会場を訪れたという菊谷氏は「ほぼ全試合、満席でした。それを見た時は『成功したな』と思いましたね」と振り返る。立川選手も「日本戦は盛り上がると思っていましたが、日本以外の国同士の試合でも、ここまで観客が入って熱狂してくれている。ラグビーが元々持っていた良さを、世間の皆さんに知ってもらうこと、触れてもらうことができてうれしいです」と喜んだ。

 ラグビーワールドカップは、オリンピック・パラリンピック、サッカーワールドカップと並び、世界3大スポーツイベントと称されるビッグイベント。日本全国12会場での観客動員数は170万人を超え、スポーツくじの収益による助成金が釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム、熊谷ラグビー場、花園ラグビー場などの整備や、大会の開催に役立てられ、大会の盛り上がりを支えた。

「子どもたちが日本代表を目指して練習するというストーリーが生まれた」(菊谷氏)

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 今大会で日本代表は目標だったベスト8入りを果たし、一時は世界ランキングが史上最高の6位まで達した。準々決勝で対戦した南アフリカのラッシー・エラスムスHCに「日本はティア1国※と同じくらい強い」と言わしめたジェイミー・ジャパンが、ここまで実力を上げられたのはなぜか。立川選手は「2015年の結果に満足せず、少しずつでも着実に積み上げてきた成果」だと話す。

「僕は2015年の後も代表合宿に参加させてもらっていましたが、選手の意識も少しずつ変わってきたと思います。2012年にエディー(・ジョーンズ)さんが代表HCになってすぐの頃は、代表ジャージを着て応援してくれるファンの方は少なかったですし、代表入りした外国人選手の中には国歌を歌わない選手も多かった。まずはエディーさんがそういう意識を変えてくれて、2015年に結果を出した。世界が日本代表を見る目も変わり、日本人のスタンダードも上がる中で、今度はジョセフHCの下で積み上げてきたものが成功に繋がっていると感じます」(立川選手)

 現在、ユース日本代表でコーチも務める菊谷氏は、トップチームからユースまで、選手や指導者の育成・強化の循環が機能し始めたこともまた、日本代表の底上げに繋がっていると見ている。

「昔は、好きな選手はニュージーランドの選手、好きなチームはオールブラックスと答える子どもたちが多くいました。でも、最近はユース世代の選手たちが、目指すチームは日本代表だと言ってくれるんです。僕がコーチとして参加し始めたのは2014年ですが、日本代表が子どもたちに憧れられる存在である、子どもたちが日本代表を目指して練習するというストーリーが生まれたことが、すごくうれしいですね。

 また、ユース世代の指導は教育の場でもあるので、コーチによる過度な指導や虐待が起こらないように、指導者向けのキャンプも開催しています。選手はもちろん、指導者も学びの場は必要です。ユース世代で選手と指導者が一緒に育っていき、彼らをトップチームに送り出す。やっとここ数年でこういった循環が始まったことも大きな意味を持つと思います」(菊谷氏)

 ユース世代では、強豪校でプレーしていなくても、体格が図抜けていたり、スピードや機動力に長けていたり、まだラグビーの実力は発揮できていないが磨けば光る原石を集める「TID(Talent IDentification=人材発掘・育成)キャンプ」、通称「ビッグマン・ファストマン・キャンプ」を定期的に開催。積極的なタレント発掘・育成に関する様々なプログラムが実施されているが、ここでもスポーツくじの収益による助成金が役立てられている。

「トップリーグも魅力を感じて応援してもらえるように」(立川選手)

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 広く愛されるスポーツでありながら、これまで野球やサッカーのような人気の定着を図れずにいたラグビーだが、立川選手はワールドカップがもたらしたブームこそ大きなチャンスだと考えている。そのためにも、現役トップリーガーとして果たすべき責任もあるという。

「ワールドカップをきっかけにラグビーに興味を持ってトップリーグを観に来てくれる人たちが『レベルが違う』と離れてしまうのではなく、トップリーグも魅力を感じて応援してもらえるようにしないといけません。それには、トップリーグの試合の質だったり、選手の行いだったりが大事になってくる。そこは現役選手たちが頑張っていく部分ですね」

 そう語る立川選手は、トークイベントでも会場に集まった人々に向け、トップリーグでの健闘を宣言。そして1人でも多くの人に試合会場に足を運び、応援を通じて選手にパワーを送ってほしいと呼びかけていた。

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 今回のワールドカップでは、敵味方問わず送られる観客の大声援、大会ボランティアのおもてなし、各国キャンプ地の歓迎ぶりなど、様々な形での応援・サポートにも注目が集まったが、そこにはラグビーというスポーツが持つ「ノーサイドの精神」もまた、大きな影響を与えている。菊谷氏はこう語る。

「ラグビーは相手と接触するプレーが多いので、そこに対して互いが100パーセントをぶつけるスポーツなんです。中途半端になると怪我にもつながる。だから、正々堂々と試合で全てを出し切るので、試合が終わった後に選手同士が握手やハグをするノーサイドが成立するのだと思います。試合が終われば、敵味方は関係ない。全力を出し切ったプレーを称え合うわけです。単純に、勝ち負けだけでは終わらないものがある。それは両チームのファンが分かれることなく客席に座っていたり、台風で被害を受けた釜石でカナダ代表チームがボランティアをしてくれたり、そういう姿にも象徴されているのだと思います」

 また、ラグビーというスポーツに出会った全ての人に、こんなことも意識してもらいたいという。

「世界のベスト8入りを果たした日本代表のスローガンが『ワンチーム』。両チーム合わせて30人の選手が一つのボールを追いかけ回すラグビーでは、チームワークがとても必要になる。そこに憧れる子ども、興味を持ってくれた人たち、応援してくれる人たちも、普段の生活からチームワークの大切さを意識していければ、思いやりを持った人間が育っていくのかなと思いますね」

日本ラグビー界が目指すべき「世界ランキング1位」 その先に見える2度目の日本開催

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 2015年の南アフリカ戦勝利から積み上げて手にした2019年の決勝トーナメント進出。2023年のフランス大会、そして、その先に広がる日本ラグビー界の未来について、2人は何を思うのか。

「それは世界ランキング1位じゃないですか。そうなれば、ワールドカップの開催が一生に一度ではなく、日本で2度目の開催が実現する可能性もある。もちろん、いろいろな課題はあると思います。でも、目標はそこに置いて、何年後か分かりませんが実現させてほしいですね」(菊谷氏)

「結果を見れば、世界のベスト8まで来ています。今回、世界ランキング2位だったアイルランドに勝ったり、前回は同じく4位だった南アフリカに勝っている。今回のワールドカップ開催で、世界に日本の良さを分かってもらえた。だから、もう一度日本開催ができるようなラグビー環境を整えるようにしていきたいですし、アジアのラグビーも日本がリーダーになって引っ張っていければいいと思います」(立川選手)

 2019年、ワールドカップ開催を通じて生まれたレガシーを途絶えさせることなく、未来へと繋ぐ。新たな挑戦に向かってスタートを切った日本ラグビー界は、これからも様々な「応援」によって支えられていく。

※ラグビーでは、世界ランキングとは別に「ティア(tier)」と呼ばれる「階級」が存在し、最上位のティア1からティア3で構成されている。

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きくたに たかし

1980年2月24日、奈良県生まれ。「ブリングアップ・ラグビー・アカデミー」主宰。御所工業高等学校に入学後、ラグビーを始め、大阪体育大学を経て、トップリーグのトヨタ自動車ヴェルブリッツ入り。圧倒的な運動量を誇るフランカー、ナンバーエイトとして頭角を現し、2005年にはラグビーワールドカップセブンズの日本代表として選出された。同年11月5日のスペイン戦で15人制の日本代表デビューを果たし、ジョン・カーワンHC時代の2008年に日本代表主将となる。2011年のワールドカップには主将として出場し、全4試合に先発出場した。イングランドの強豪クラブチーム、サラセンズでのプレーを経て、2014年からトップリーグのキヤノンイーグルス入り。2018年に現役を退くまで、日本代表として歴代7位となる68キャップを誇る。現在は、「ブリングアップ・ラグビー・アカデミー」で指導するほか、ユース日本代表のコーチも務める。

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立川 理道たてかわ はるみち

1989年12月2日、奈良県生まれ。クボタスピアーズ所属。ポジションはセンター。日本代表キャップ数55(2019年10月29日現在)。4歳からラグビーを始め、天理高等学校では全国高等学校ラグビーフットボール大会に出場したほか、U-20日本代表にも選出された。天理大学に進学後は、主将として全国大学ラグビーフットボール選手権大会でチーム初の準優勝に貢献した。卒業後にクボタスピアーズ入り。エディー・ジョーンズHC時代の2012年、アジア5カ国対抗でのカザフスタン戦で日本代表デビュー。2015年のワールドカップに出場し、「ブライトンの奇跡」と呼ばれる南アフリカ戦での勝利に貢献した。2019年のワールドカップにも直前まで代表候補として合宿に参加し、その後はニュージーランドのオタゴと短期契約を結び、プレーもしている。

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