インタビュー

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ユメミルノート vol.5|子どもたちに届けたい サニブラウンが次世代に繋ぐ夢

陸上 サニブラウン・アブデル・ハキーム選手

 闘い抜くアスリートたちはこれまでにどんな夢を掲げ、叶えてきたのでしょう? そして、その夢のためにどのような努力をし、失敗や苦労を乗り越え、どんな人やものに支えられてきたのでしょうか。そんなアスリートの夢を紐解く連載「ユメミルノート by スポーツくじ」。第5回は、陸上男子のサニブラウン・アブデル・ハキーム選手が登場。

 陸上男子100mで日本記録(当時)9秒97、200mでは日本歴代2位の20秒08など数々の記録を樹立し、2022年には日本人で初めて世界選手権大会(世界陸上)の決勝に進出するなど、名だたるスプリンターがひしめく世界の舞台で果敢に挑んできたサニブラウン選手。

 日本国内に滞在中のある日、国立競技場を見下ろすホテルの一室に現れると、移動やトレーニングの疲れを見せることなく笑顔で取材に応えてくれました。実は陸上が好きではなかったという幼少期に抱いていた夢、プロとしての意識や次世代の子どもたちに向けた熱い思い、スポーツくじの助成金についてもお話を伺いました。

サニブラウン選手が記入したユメミルノート int_171_2
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ロナウジーニョに憧れた幼少期

int_171_4 幼少期のサニブラウン選手 [写真]=本人提供

 友達と走り回って遊ぶのが大好きで、幼い頃はサッカーに熱中していたサニブラウン選手。小学校3年生の頃、陸上をやっていた母から団体競技よりも個人競技に向いているのではと背中を押され、本格的に陸上に取り組み始めました。

「母の繋がりで、走り幅跳びの第一人者である森長正樹コーチに指導してもらっていました。具体的に何を教えてもらったかあまり覚えていないのですが(笑)、地元の公園で練習したことが記憶に残っています」

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 とにかく体を動かすことが大好きだったサニブラウン選手は、幼心に「スポーツ選手になりたい」と思っていたのだそう。特に、サッカー元ブラジル代表のロナウジーニョ選手が楽しそうにサッカーをする姿に憧れていたと語ります。

「ロナウジーニョ選手をはじめ、好きなことを究極まで極め、世界のトップレベルで楽しそうにプレーするアスリートの方々の活躍やライフスタイルを見て、僕もスポーツ選手になりたいと思うようになりました。陸上に関しては、始めたばかりの頃はそこまで好きではなくて、楽しめていなかったんですよね。だから、当時の自分には『楽しめよ』と言ってあげたいです」

テレビで見ていた世界陸上に高校2年生で初出場

int_171_6 2015年世界ユース選手権100mで大会記録を更新 [写真]=Buda Mendes/Getty Images

 中学校に進学すると陸上に照準を定めて研鑽を積んでいきます。成長痛などに悩まされながらも中学3年生になるとようやく思うように走れるようになり、やっと陸上を好きになれたといいます。その後、インターハイや日本ジュニア陸上など、並いる強豪を抑えて記録を伸ばし、めきめきと頭角を現していったサニブラウン選手。

 高校2年生の時には世界ユース選手権に出場し、男子200mで当時ウサイン・ボルト選手が保持していた大会記録を更新。そして、同年、初めて出場した世界陸上が人生のターニングポイントになったといいます。

int_171_7 2015年に初めて世界陸上に出場した [写真]=Michael Steele/Getty Images

 世界を目指したい、オリンピックで金メダルを獲りたい――。そんな目標にはまだまだ手が届かないと思っていた最中で感じた世界の最前線。サニブラウン選手は当時をこう振り返ります。

「テレビで世界陸上を見ていたので、同じ舞台に自分が立っているということが信じられないというのが率直な感想でした。当時は世界に対してまだまだ距離感がものすごくあるから一つ一つ段階を踏んで歩んでいけたらいいなと思っていましたが、もうすでに自分は世界の舞台で闘えるんだなと実感することができました」

世界で闘うため、自分の人生を謳歌するための意識

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 この世界陸上出場をきっかけに、世界のトップ選手たちと同じ環境で練習をしたり、一緒に走ったりすることが、自分にとって最善の選択だと感じるように。そして、世界で闘っていくためには、とにかく自分の意志を強く持つことが重要だと考えるようになったといいます。

「アメリカの大学に進学したのも、プロに転向したのも、世界のトップレベルで闘うためにはどうしたらいいか、どうやったら目標を達成できるかを考えたうえで選択したことです。

 いろいろな経験をして、いろいろなものに触れて、いろいろな人の話を聞いて、最後は自分の意志が大事だという意識が培われていったと思います。どんなものに左右されようが結局は自分の人生なので、自分の意志を一番大切にしていきたいといつも思っています」

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母親や恩師の支え、そして自分がスポーツを支える側に

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 どんな時も自分の意志を大切に歩んできた競技人生。今や日本の短距離界を牽引するスプリンターですが、これまでに叶えたいちばん大きな夢はやはりプロのアスリートになれたことだと語ります。

「幼少期からの夢であるプロアスリートになれたことは大きいですね。母がどんな時でもサポートしてくれたことや高校の恩師の存在が大きいです。それ以外にも本当にいろんな人が僕に関わってくださってここまで来ることができたので、支えてくれたすべての方々に感謝しきれない気持ちです」

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 周囲で支えてくれる人だけでなく、スポーツくじの助成金についても「とてもありがたいです」とサニブラウン選手は続けます。

「スポーツくじの助成金は競技者としてものすごくありがたいです。僕も陸上を盛り上げたいという思いから自分でいろいろな合宿や大会を開催していて、スポーツくじの取り組みとは活動が似ているのではないかと感じています。

 自分一人の力では限界があると感じることもありますが、僕たちが活動をすることで未来を担う子どもたちに影響が与えられますし、地域の活性化にも繋がっていくはず。スポーツくじの活動によってスポーツ界だけでなく、日本自体がもっともっと活気づいていくのではないかと思います」

次世代の選手や子どもたちに夢やインパクトを与えたい

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 若い世代にインパクトや夢を与えたい。オリンピックで金メダルを獲得すること、世界記録を更新すること、そんな競技面での目標に加えて、プロになってから未来の子どもたちへの影響も大きく考えるようになったというサニブラウン選手。その夢に向けての思いをこう語ります。

「競技面での目標は高校時代から変わっていません。僕もまだ若いのですが、自分よりも下の世代にインパクトや夢、いいモチベーションを与えられる選手になっていかないといけないと思っています。

 新型コロナウイルスの影響でスポーツの大会が開催されなかったり、開催されても観客のみなさんが足を運ぶことができなかったり、いろいろな面でスポーツの意義を考えさせられる機会がたくさんありました。

 そういったことから、観客のみなさんにスポーツを楽しんでもらうことはもちろん、子どもたちが元気に走り回ってスポーツを楽しむことの重要性を感じるようになりました」

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 日本の短距離界の最前線で闘う現役選手として、何か子どもたちに与えられるものがあるはず。そんな思いから、「まずはしっかりパフォーマンスを発揮して競技面でいい結果を出すことが、アスリートとしての一番の仕事だと感じています」と、これからの展望をこう語りました。

「自分の背中を見せることで、若い世代や周りの選手たちを引っ張っていきたいですね。競技外では地方で合宿をしたり、子どもたちと触れ合う機会を作ったり、応援してくれている方々にお返しをしたいです。

 小さな機会でも触れ合った子どもたちの人生が変わる可能性もある。だからこそ、一場面一場面を大切にして、これからも活動をしていけたらと思っています」

陸上への助成

 スポーツくじの収益は、陸上の普及・発展のためにも役立てられています。

 地域の陸上競技場の写真判定装置の設置や陸上体験教室の開催、世代別の強化研修合宿や陸上競技大会の開催など、スポーツくじの助成金が広く役立てられており、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手ら日本を代表する陸上選手の輩出を後押ししています。

 スポーツくじの助成金は、陸上をはじめとした日本のスポーツの国際競技力向上、地域におけるスポーツ環境の整備・充実など、スポーツの普及・振興のために役立てられています。

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(取材:2025年7月)

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サニブラウン・アブデル・ハキーム

1999年3月6日、福岡県出身。16歳だった2015年の世界ユース選手権で男子100mと200mで2冠を達成。200mでは、ウサイン・ボルト選手が持っていた大会記録を更新し注目を集める。2017年アメリカのフロリダ大学に進学。2019年の全米大学陸上選手権男子100mで9秒97の日本記録(当時)を樹立。同年、プロ転向を表明し20歳でプロ選手に。2022年オレゴン世界選手権大会では日本人初の決勝進出を果たした。東レ所属。

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