私たちの街のGROWING

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山の楽しみ方が学べる奈良県明日香村のトレッキング教室

奈良県明日香村

 奈良県の中央部に位置する明日香村。飛鳥時代には日本の政治や文化の中心として栄え、数々の古墳や史跡が残る古代ロマン漂う地域です。また条例によって景観が保護されており、手つかずの自然や美しい山々が楽しめることも特徴的です。そんな明日香村では、風光明媚な自然や由緒ある史跡なども訪れるトレッキング教室が開催され、毎年人気を集めているといいます。トレッキング教室の取り組みやその魅力を、教室でガイドをしている西浦勝也さん・里美さんと、奈良県明日香村教育課の涌田拓幸さんにお伺いしました。

自然と触れ合う魅力を多くの人に届けたい。

 近年人気が高まっているアウトドアアクティビティ。トレッキングもその一つであり、移動や旅行といった意味を持つ英語「Trek」が語源だといいます。登山は、登山道を登り山頂を目指すことを目的とするのに対し、トレッキングは山歩きを通して、美しい自然風景や山に息づく動植物を楽しむことを目的としたものだと言われています。

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ガイドをしている西浦勝也さん・里美さん

西浦(勝)「明日香村は、周りを山や丘に囲まれた盆地。また近隣の山には熊野古道や参詣道などの古道がたくさんありトレッキングに向いている環境です。そこで明日香村周辺の山々や自然の景色をもっと楽しんでほしいという思いから、明日香村トレッキング教室は始まりました」

 トレッキング教室は、年間を通して全12回。火曜コースと日曜コースの2コースがあり、各回18人程度が参加しています。

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西浦(勝)「参加者は明日香村の方が多いですが、近隣の市や大阪から通われている方もいらっしゃいます。この教室でゼロからトレッキングを始める方も多くいらっしゃいますし、登山のブランクがある方が、この教室を機に再開することもあるようです。幅広い方に、トレッキングの魅力を感じてもらいたいんです」

 季節の見所や、地域の名所を巡り、毎年コースが変わるトレッキング教室。中には毎年参加されている方もいるようです。

西浦(里)「あちこち下見をしながら、参加者のレベルに合わせて行き先を決めています。季節ごとの変化を楽しんでもらえるように、春には桜やミツバツツジ、秋には紅葉やヤマハハコ、冬は雪や水仙など、その時々の見所をコースで巡るようにしています。毎年のコース選びは本当に悩みますが、時間をかけて選んだ分、参加者の方に喜んでもらえるとうれしいです」

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 2022年度のトレッキング教室では、奈良県を中心とした様々な山々を巡りました。日本二百名山の一つである伯母子〔おばこ〕岳(奈良県)に登るコースや高野山(和歌山県)の参詣道を歩くコース。また福知山線廃線敷などを歩く武庫川渓谷(兵庫県)のコースなど、毎回趣向を凝らしています。さらに教室では、山の歩き方や天気の読み方、ケガの応急処置や自然観察のコツなど、実践に使える方法が学べるといいます。

西浦(勝)「この教室は、難易度の高い山に登山することを目指してもらうというものではなくて、みんなで楽しく安全に登って、トレッキングを長く続けてもらうことを目的にしているんです。全12回の教室を通して、山の歩き方や山の楽しみ方を何か一つでも学んで帰ってほしいと思っています。
 一方で、山には奥深い魅力もありますが危険もあります。そして正しい知識を持っていないとその危険性は高まります。例えば、天気予報が晴れであればレインウェアを持ってこない方もいらっしゃいますが、天気の変わりやすい山ではいつ雨が降るかわかりませんし、レインウェアは防寒具としても使えて必須の持ち物なんです。そういった基本的な装備についての知識や、コンパスの使い方、いざというときの怪我の応急処置の方法はもちろん、紅葉のしくみや花の名前なども教えています」

 西浦さんが教室を続けるやりがいとなっているのが、参加者の喜びの声だといいます。

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西浦(勝)「2022年の第8回目となる教室では、標高1344mの伯母子岳に登りました。今回はあえて歩く速度を上げて頂上を目指しましたが、今までのトレッキングの成果か、みなさん難なくついてきてくれました。頂上に登りきったときに見えた景色は圧巻。参加者の方も絶景に感動しており、楽しそうな姿をみて教室をやってきて良かったと思いました」

 またトレッキング教室の影響で、スポーツに対する関心が高まっていることも、やりがいの一つだそうです。

西浦(勝)「トレッキングは自分にあった山を選べばいくつになっても楽しめるスポーツですが、年齢とともに筋力はどんどん落ちていってしまいます。参加者の中には、この教室に参加し続けるためにジムやヨガ教室で鍛えている方もいらっしゃいますし、次の教室に備えてランニングやウォーキングなどの下準備をされている方も多くいらっしゃいます。この前、明日香村でハーフマラソンの大会が開かれた時は、教室内の有志のメンバーがランニングサークルを開き、みなさんでトレーニングに励み、大会にも出場されました。それに、何度も一緒に山に登るうちに参加者の皆さんも自然と仲良くなるようです。一緒にスポーツを楽しむ仲間がたくさんできるのも良いですよね。仲良しになった方々同士でさらに高い山に挑戦したりもしているようです」

より参加のハードルを下げ、気軽に参加できる教室に。

 2018年度からはさらに気軽に参加できるように、スポーツくじの助成金を教室の運営に活用しています。教室を主催する明日香村教育課の涌田さんは語ります。

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涌田「参加者の費用負担を減らし、気軽に参加できる人が増えるように2018年度から助成金の活用を始めました。登山道具は初期費用がかかりますが、始めたばかりの方が一式を揃えるのは大変ですよね。そこで登山道具やコンパス、地図などを貸し出しています。特に雪山のときは『アイゼン』と呼ばれる金属製の滑り止め用靴底が必須なのですが、アイゼンを持っている人限定にしてしまうと参加の間口を狭めてしまいますよね。道具を貸し出しすることで、持っていない方でも気軽に参加できますし、一度使ってみることで必要性がわかり購入される方も多いです。また、助成金を活用することで、教室の回数そのものが増えました。以前は日曜日のコースだけでしたが火曜日のコースも開催できるようになり、平日都合がいい人のためのコースも開催するようになりました。参加できる人も、楽しめる人も、増えましたね」

 助成金の活用によって安全性も高まっているといいます。

涌田「怪我や傷の可能性はゼロではありませんので、応急処置の道具も助成金を活用してそろえています。テーピングや三角巾の使い方を参加者に教えやすくなりましたし、安全で楽しくという教室のモットーが実現できているようです」

 2023年度の春のコースを控える中で、トレッキング教室の今後の展望をどのように考えているのでしょうか。

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西浦(里)「子どもたちや親子など初心者の方の参加をもっと増やしていけたらと思っています。小さいうちから山の魅力に気づいてもらえればその後の人生でも山を歩く機会が増えると思うんです。
 また、明日香村の近くには、古道や雰囲気の良い山々が多くありますが、地元の方々には意外と知られていません。トレッキング教室を通して明日香村や周辺の知られざる魅力をもっともっと見つけてもらいたいですね」

 地域の特性にあった山の楽しみ方を学べ、スポーツの楽しみまで広がる、明日香村のトレッキング教室。ここで学んだ山の楽しみ方は一生物の知恵となり、いくつになっても役立てられることでしょう。

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Q1

本記事を読んで、スポーツくじ(toto・BIG)の収益が、日本のスポーツに役立てられていることを理解できましたか?

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