インタビュー

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仲間の理解から始まるチームの輪 違いを越えて生かす自分らしさ

車いすラグビー 倉橋香衣選手

車いすラグビーで感じた解放感「素敵だな」

 東京パラリンピックで日本代表が銅メダルを獲得し、話題となった車いすラグビー。トライをとるため車いす同士が容赦なく激しくぶつかり合う、そんな光景に驚いた人も少なくないだろう。ガシャーン!と大きく鳴り響く衝突音が象徴するその激しさから、かつては「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれていたそうだ。

「タックルが楽しくて競技を始めたので、怖いと思ったことはありません。成功したら『上手くいった!』と逆にうれしくなりますね!」

 そう言いながら屈託のない笑顔を浮かべるのは、日本代表12人で唯一の女性選手として活躍する倉橋香衣選手だ。柔らかな口調とは裏腹に、試合が始まれば相手選手を目掛けて激しくタックル。車いすラグビーを始めようと思ったきっかけが「タックルでぶつかっても怒られないのがいいなと思って(笑)」というから面白い。

 車いすユーザーになったのは、トランポリン部に所属した大学3年生の時。練習中の事故で頸髄を損傷し、鎖骨から下の感覚がほぼなくなった。大学への復学を目指してリハビリ生活を送る中で出会ったスポーツの一つが、車いすラグビーだ。そこで味わった解放感に魅せられた。

「車いすから落ちたら自分では上がれないし、誰かとぶつかったら怪我をさせてしまうかもしれない。よく壁にぶつかったりエレベーターの扉に挟まれたりしていた私は、看護師さんから『もっと丁寧に生活しなさい』と助言されていました。そんな時、車いす同士でぶつかってワハハと笑い合う車いすラグビーの選手を見て『素敵だな』と思ったんです」

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 車いすラグビーは、男女混合の競技で試合は4対4で行われる。選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、コート上の4選手は合計8点以内で構成しなければならない。女性選手が出場する時は一人あたり合計に0.5点の追加が認められ、性差による体格や力の不均衡を補う工夫がなされている。

 倉橋選手は障がいの程度が重く、持ち点は最も低い0.5点。障がいの軽いハイポインターと呼ばれる選手たちがパスやトライをするのに対し、倉橋選手は、ローポインター(守備的な選手)として相手選手にタックルしたり壁となって行く手を阻んだりする役割を任されている。「次はどう展開するか考えるのはもちろん、私は車いすの漕ぎ出しも遅い方なので判断と実行の速さは意識しています」と説明する。

 同じ持ち点の選手でも障がいの種類は人それぞれ。逆に、同じ障がいでも程度によって得手不得手は違う。「一人ひとりの身体の状態や、得意なこと苦手なことを理解し合うからこそ成り立つプレーもあります。健常者スポーツでは仲間に『どの指が動くの?』と聞くことはないと思いますが、私たちはお互いに身体の作りや動きに興味を持って、聞きながら理解を深めています」。些細なことでも仲間の理解が深まれば、自然といいプレーが増え、チームの完成度は高まる。

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