インタビュー

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自分で限界を作らない 夏冬“二刀流”に挑むパラリンピアンが見る景色(2/3)

パラアルペンスキー 村岡桃佳選手

陸上挑戦で取り戻したスキーの楽しさ「やっぱり雪上にいるのが好き」

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 やるからには全身全霊をかける覚悟で臨んだ。それが競技者として最低限の礼儀だと感じたからだ。

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「もし生半可な気持ちでスキーに転向してくる人がいたら、自分はすごく嫌だと思うはず。だからこそ、自分も生半可な気持ちでは取り組みたくないし、何よりも陸上に対して、真摯に取り組んでいるアスリートに対して、すごく失礼ですから」

 陸上と正面から向き合い、全力を注いだ。順調にタイムが伸び、状態が上がる中、思わぬ事態が発生した。新型コロナウイルス感染症の影響による東京パラリンピックの開催延期だ。予想外かつ未曾有の出来事ではあったが悲観せず、「1年長く練習する時間ができた」と前向きに捉え、目標を当初の「東京パラリンピック出場」から「東京パラリンピックでの決勝進出」まで引き上げた。

 たゆまぬ努力はスポーツ界が動き出すと結果として表れた。2020年9月の日本パラ陸上競技選手権大会では日本新記録となる16秒67を叩き出して優勝。さらに2021年3月の同大会でも優勝し、東京パラリンピック出場権を獲得。見事、第一関門をクリアした。

 迎えた東京パラリンピック本番。予選では「正直、自分の力が発揮できなかった」と悔しさを滲ませるが、8位通過で決勝進出。決勝では「自分の持っていた力をフルに発揮できたレース。予選での反省点を修正できた結果でした」と6位でゴールを切った。

「ゴールした時にすごく達成感、爽快感に満ちあふれていて、本当に陸上に挑戦して良かったと思えるレースでした。たった16、17秒という短い時間でしたが、私の2年半が詰まった満足な結果でした」

 そして今、村岡選手の目は3月に開催が迫る北京パラリンピックを捉えている。新型コロナウイルス感染症の影響で北京までの準備時間は1年短くなり、半年ほどとなってしまった。さすがに「自分が想像していたより1日があっという間に過ぎてしまう。時間が足りません」と悲鳴を上げるが、顔に浮かぶのは充実の表情だ。その理由は再び感じた「楽しさ」にある。

「夏が終わって雪上に戻った時、いろいろ不安な気持ちがありましたが、久々にスキーをしたことがすごく楽しかったんです。やっぱり雪上にいるのが好きだなって思えたことにすごく安心したし、自分の滑りをもっと改善できると感じたし、プラスな気持ちで向き合えている。陸上を経験したことで気持ちがリセットできたのかもしれません」

 北京では2大会連続のメダル獲得に期待も高まるが、もう自分自身に過度のプレッシャーをかけることはない。目指すのは、二刀流への挑戦を笑顔で締めくくることだ。

「自分の中では東京パラリンピックに出場して、ようやく二刀流の挑戦をスタートできたと思っています。そして、そのゴールは北京パラリンピックでメダルを獲ること。東京で決勝を終えた時のような達成感であったり、挑戦して良かったと思える気持ちであったりを北京で味わい、笑顔で終われたらいいなと思います」

 新しいことに挑戦したり、新しい環境に飛び込んだりすることが、実は苦手だという村岡選手。「パイオニアになろうなんて意欲は特にないんです」と意外な告白をするが、「ただ自分が決めたことは貫き通します。言ったからにはやらないと格好悪いし、自分に負けた気がして嫌なんです(笑)」とも。村岡選手を突き動かす原動力は、負けず嫌いな性格にあるようだ。

◆次ページ:伝えたいスポーツの魅力「村岡桃佳という人間を作り上げたのはスポーツ」

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