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銀メダリストが49歳になっても走る理由 世界マスターズ陸上に挑む姿(2/3)

大切な言葉は「100メートルは人間力」

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「みんないい仲間。マスターズ陸上競技をやらなかったら知り合えないような人たち」。再び走りを追求する中で得た、新たな出会いがうれしかった。

【特集】「走り」で人は変われる 子どもが運動会でヒーロー・ヒロインになる方法 / 陸上・伊藤友広氏 / 秋本真吾氏インタビュー

 中学生の頃はハンドボールで汗を流し、高校生から本格的に陸上を始めた。スポーツを通じ、「忍耐や達成感を得ること」を学んだ。目標を定め、大会前から逆算し、いま何をすべきかを考えて実行する。この力が、引退後も指導者としての活動や陸上教室などのイベント開催に生かされている。

「スポーツは結果を出さないといけない期日が決まっていて、それに向かって調整していく。そのプロセスは何をやるにも同じだと思います。陸上競技は個人競技ですが、僕の場合は海外へ行ったり、合宿などでいろいろな選手と仲間になったりする。人とコミュニケーションを取るのは好きだったので、それはすごく生きています」

 現役時代に大切にした言葉は「100メートルは人間力」。朝原氏は1999年、27歳の時に左足首を疲労骨折した。「イケイケでやっていたら気づかない時があるんですよね。自分一人でいろいろなことが成り立っていて、自分の力でやっていると思っていた」。しかし、怪我をしたことで「冷静に自分を見つめ直すと、多くの人にお世話になっていたことに気づいた」という。

 走るというシンプルな種目だが、そこには多くのものが詰まっている。

「技術や身体のケアなどの情報を人から得ないと強くなれない。シンプルでも、それまでにはいろいろな準備が必要。本当に応援されていないとできません。柔道でいうと礼儀や謙虚な気持ち。そういうものがないと強くなれない」

 現役時代の学びを指導者の道で伝えている。2010年4月には、スポーツを通した「青少年の健全な成長」と「次世代を担うトップアスリートの育成」などを目的に、スポーツクラブ「NOBY T&F CLUB」を設立した。朝原氏の愛称「ノビー」も名前に入り、小学1年生から85歳まで老若男女がスポーツを楽しめるクラブ。トップを目指す選手だけでなく健康目的の会員も多く、世界陸上競技選手権大会を経験した元選手がコーチとして在籍している。

 クラブのモットーについて、朝原氏は「楽しんで体力をつけて、運動を好きになってもらうのが第一。知らず知らずのうちにいろいろなことが上手になっているように」と説く。走ることはもちろん、子どもたちを飽きさせないよう、遊び感覚で多くのメニューに取り組ませている。

 地域に根ざした環境作りを目指し、「学校を超えた交流があるのが一番いいこと」と説明。初めは高校生以上のトップ選手育成が目的だったが、幼少期からの継続した指導の必要性を感じ、小学生も対象に広げた。中学生、高校生は全国大会に出場するレベルの選手も在籍しているが、必ずしも上を目指さなければならないわけではない。

「クラブの一番の特徴はそこ。友達作りに来ている子からトップ選手まで教えられる」。中には野球、サッカー、ラグビーなどを主にやっている選手が「身体の動き作り」「足が速くなりたい」という目的で通っているという。子どもたちには「ノビーのお約束」として「挨拶しよう」「靴を揃えましょう」「コーチの話を聞きましょう」「思いやりを持とう」の4つを伝える。些細だが、大切なことだ。

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