インタビュー

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幼少期から養われた“世界を見る目” パリ期待の星を支える家族の絆

ブレイキン 半井重幸選手

「スポーツから学ぶ、成長のヒント」GROWING byスポーツくじ。今回は、2024年パリオリンピックの新競技、ブレイキンで活躍する半井重幸選手が登場する。姉・彩弥さんに影響を受けて7歳からブレイキンを始めると、すぐに頭角を現して国内外の大会で次々と優勝。今や日本を代表するBboy・Shigekixとして世界に名を轟かせる。パリオリンピックでの金メダル獲得の期待が高まる日本のエースはどのような環境で、その腕を磨いたのか。前編では、競技を続ける上で欠かせない家族の存在について触れながら、強さの秘密に迫る。

“聖地”で夜9時から始まるダンスの練習「大人の空間にお邪魔している感じ」

 関西ストリートダンスの聖地・大阪シティエアターミナル地下1階にあるポンテ広場。小学2年生だった半井少年はここでブレイキンと運命的な出会いを果たす。4歳上の姉についてやってきたポンテ広場で踊るのは、20代、30代の大人たち。目の前で繰り広げられるアクロバティックなダンスムーブの数々に「人間ってこんな動きができるんだ」と目を奪われた。

「当時はブレイキンをする子どもが少なかったので、姉も僕もすごくかわいがってもらいました。カッコいいなと自然な流れで興味が湧いてきて、気が付いたら父のタオルを巻いた頭を床につけて練習し始めるようになったんです」

 好奇心が旺盛だった幼少期。見よう見まねで挑戦した技がすんなりできるようになり、「技を習得する喜びを覚えました」。その一方、1週間かけてもできない技があると「絶対できるようになりたいと燃える。ゲームをクリアしていくような感覚だったんだと思います」。新しい技を次々と覚える半井姉弟に、ポンテ広場の大人たちは熱心にアドバイスを送り、目を細めながら成長を見守った。

 半井選手のようにプロとして活躍するダンサーもいるが、今でも大半は学校や仕事との両立を図っている。そのため、練習が始まるのは夜9時からと遅い。「両親が送り迎えをして、練習中も見守ってくれていました。大人の空間にお邪魔している感じで楽しかったのを覚えています」。学校とはまた違う、異次元の空間に入り込んだワクワク感がたまらなかった。

両親は教育熱心ながら「僕や姉の『好き』という気持ちを尊重」

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 ポンテ広場にはほぼ毎日通った。学校で過ごす日中も「今日の練習を楽しみに、モチベーションとしていました」。学校を終え、習い事を済ませると仮眠を取り、練習へ向かう車中も寝て体力を温存。夜9時から始まる練習に備えた。傍からは大変そうに思えるスケジュールも、練習する楽しさが圧倒的に勝っていた。

「土台として踊ることが楽しい気持ちがあって、練習したいというピュアな想いは今でも変わりません。友達と遊ぶより毎日練習したかった。両親や姉のサポートがあったおかげで、今もずっと途切れることなくやらせてもらっています」

 毎日の送り迎えや大会出場時の付き添いなど、ブレイキンの活動を全面的にサポートしてくれた両親には感謝してもしきれない。両親は元々「僕や姉の『好き』という気持ちを尊重してくれるスタンス」だというが、「教育という点では厳しかったように思います」と振り返る。

「子どもながらにブレイキンという一般的ではないことをしていたので、その分、当然やるべきことは人一倍やらないとだめだと言われていました。だから、宿題が終わらなければ練習には行かせてもらえないし、習い事にもほぼ毎日通っていた。英会話は幼稚園から中学3年生まで続けましたし、トランポリンや水泳を習ったり、学習塾にも通ったり。『僕はいつ寝る時間があるんだ?』と思いながら、ダンスをするために毎日必死でした(笑)。ただ、今はかえって有難く思っています」

「世界を見てほしい」――母から受けたアドバイスの意味

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 小学生から海外の大会に参加するが、英会話を続けたおかげでコミュニケーションには困らず、世界中にネットワークが広がった。日本という枠に囚われることなく、早くから世界を一つの舞台と見る広い視野も備わった。これは若い頃に海外で経験を積んだ母の影響が大きいという。

「母は10代の頃から自分で貯金をして海外に出掛けていたアクティブな人で、小さい頃から何をするにも世界を見てほしいと言われていました。世界はもっと広いんだから、物事を見る時はその地域レベル、国レベルでは捉えないようにって。だから、9歳の頃に初めて海外の大会で踊った動画がインターネットで注目されて、世界中から大きなリアクションとポジティブな評価をもらった時、『もっと世界で活躍したい、世界を見たい』と思うと同時に、母の言っていたことが少し分かった気がしました」

 世界を見るように導いてくれた母は「やると決めたことには一切の言い訳を許さない」タイプ。「ブレイキンは僕より詳しいくらい」という情報通で、時には助言もくれる頼れる存在だ。「仲はいいけど、ちょっと師匠感があって緊張します」とおどけて笑うが、「僕と姉の状況を自分のことのように感じてくれながらも、常に前向きなサポートをしてくれる。その中に後ろ向きな姿は見せないという強い気持ちを感じます」と背中を押される。

一番身近で切磋琢磨する大切な姉の存在

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 子どもたちと真正面から向き合う母に対し、父は「ブレイキンに興味を持っているけど詳しいわけではなく、とにかく見守っていてくれる感じ。(母と)バランスが取れているんだと思います」と懐深く支えてくれる。そして、ブレイキンを始めるきっかけとなった姉は、今も一番身近で切磋琢磨する大切な存在だ。

「人としての僕も、ダンサーとしての僕も多分誰より見てきているし、同じ感覚で理解してくれている。お互い高め合って、尊敬し合う関係性にあると思います。姉のサポートや存在があるから頑張れているし、自分も彼女にとってそういう存在であれたらいい。姉がいなければ、間違いなく今の自分はないので、すごく感謝しています」

 国内外の大会で50回以上の優勝を重ね、全日本ブレイキン選手権は3連覇中。世界の舞台で一際強い存在感を放つShigekixは、「好き」という気持ちを大切に導く家族の絆に支えられている。

 後編では、半井選手を駆り立てる“悔しさ”と、自分を見つめ直すターニングポイントになった2018年のブエノスアイレスユースオリンピックについてお伺いします。

(後編はこちら)真剣さが生む悔しい気持ち「俺、まだブレイキンがむっちゃ好きやな」

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半井 重幸なからい しげゆき

2002年3月11日、大阪府出身。姉の影響で7歳からブレイキンを始め、ダンサーネーム「Shigekix」として世界中で活躍する。小学生から海外の大会にも出場し、2014年には11歳でブレイキンの世界選手権「Chelles Battle Pro」のBaby Battle 1on1にて優勝。各地で開催される世界大会ではキッズ部門ばかりか、一般ソロ部門でも優勝を重ね、15歳だった2017年には最高峰とされる「Red Bull BC One World Final」に史上最年少出場を果たした。2018年にはブエノスアイレスユースオリンピックで銅メダルを獲得。2020年には「Red Bull BC One World Final」で史上最年少優勝を飾り、同年から全日本ブレイキン選手権で3連覇中。得意技は身体の動きを瞬時に静止するフリーズ。

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