インタビュー

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真剣さが生む悔しい気持ち「俺、まだブレイキンがむっちゃ好きやな」

ブレイキン 半井重幸選手

「スポーツから学ぶ、成長のヒント」GROWING byスポーツくじ。今回は、2024年パリオリンピックの新競技、ブレイキンで金メダルの期待がかかる半井重幸選手が登場する。小学生から国内外の大会で次々と優勝を重ね、史上最年少記録を塗り替えてきたが、自身の記憶に残るのは「悔しい想い」が大半だという。後編では、半井選手が考える悔しさの意義、成長を促されたユースオリンピックについて紐解く。

(前編はこちら)幼少期から養われた“世界を見る目” パリ期待の星を支える家族の絆

小学生から国内外の大会で積み上げた順風満帆のキャリア

 小学生の頃から海外の大会に出場し始めた。結果を残すことも大事だったが、ブレイキンを通じて世界各地の仲間と出会い、ネットワークが広がる喜びを感じていた。生まれ育った国や地域は違えど、親友であり、戦友でもある仲間たち。互いの地元を訪れることもあるが、必ず彼らに会える場所は世界各地で開催される大会だ。

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「大会で活躍することが軸としては一番大事。でも、それに付随して生まれるコミュニティだったり、ブレイキンをやっていなければ見えなかった景色や巡り合わせというものに、結果を残すことと同じ、時にはそれ以上の価値があるのかなと、海外に頻繁に行くようになって感じました。自分がシーンに居続けることで会えるんだって」

 仲間に会いたい想いもあり、国内外を問わず積極的に大会に参加した。音楽とダンスを巧みに調和させながら高速のパワームーブ(アクロバティックな動き)も取り入れる圧倒的なパフォーマンスを武器に、キッズダンサーとして数々の世界大会で優勝。2016年からは一般ソロ部門でも快進撃を見せ、高校1年生だった2015年には世界最高峰の大会とされるRed Bull BC One World Finalに史上最年少出場を果たすなど、順風満帆にキャリアを積み上げてきた。

うれしい記憶がある一方、鮮明に残る悔しい記憶

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 だが、当の本人には「順調に勝ち続けてきた」という感覚はないようだ。

「傍から見える感じと自分自身の感覚は全然違うのかなって。僕自身は目の前の一戦一戦にすごく集中しているので、ずっと順調にきたというより、勝ったり負けたりを繰り返している感覚。なんなら誰よりも悔しい経験をいっぱいしていると自分で思えるくらい、とにかくチャレンジし続けている。それがいい結果に繋がる時もあれば、悔しい結果に繋がることもあり、それを経てまたチャレンジしての繰り返し。ただ、周りから見るとチャレンジを続けること自体が成長している姿に見えるのかもしれません。でも、僕としては『どんだけ悔しい想いすんねん』っていうくらい悔しい想いばかりしている感覚なんです」

 うれしい記憶もたくさんある一方、「鮮明に刻まれているのは悔しい記憶ばかり」だというが、悔しい気持ちはポジティブなものとして次に活かされている。

「最近、悔しいって思えていることも大事なのかなと思っています。どうでもいいと思っていることは本当にどうでもよくて、悔しいことが起きても刻まれるほどの悔しさではない。でも、何かに真剣になればなるほど悩みや悔しい気持ちは生まれてくる。だから、すげぇ悔しいって思えた時、改めて『俺、まだブレイキンがむっちゃ好きやな』って(笑)。魂を込めているからこそ、すげぇ悔しいし、ちゃんと落ち込んだりできるんやなって思います」

乗り越えるために1年を要したユースオリンピックの悔しさ

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 今でこそ悔しさを前に踏み出す原動力としているが、長い期間にわたり悩み、もがいたこともある。それが2018年、ブエノスアイレスユースオリンピックでのことだ。前哨戦のWDSF世界ユースブレイキン選手権で優勝し、金メダルを期待されたが、本番では納得のいくパフォーマンスができず銅メダルに終わった。

「負けた結果やその後の状況だけではなく、大会前のプレッシャーに向き合うにあたり、自分で何が正解なのか分からなかったんです。当時はまだ16歳。人としても未熟で、経験値も足りなかった。とにかく必死ではあったんですけど、今考えると、あの時は金メダルを獲れる準備はまだできていなかったのかなと。悔しさに毎日取り憑かれている感じで1年くらいは抜け出せませんでした。どう受け止めていいか分からずに、もがいていましたね」

 この時は何より時間が必要だった。時間とともに結果を受け止める心が整い、視線は過去から未来へと向くようになった。「過去をどうこう思うより、いい経験だったと思えるようにしていこう」と思えるまで時間は掛かったが、誰でもない、自分の力でしか解決できないことだ。この過程を近くで見守ってくれた家族や仲間の存在は心強かった。

 この経験をきっかけに「ダンサーとしての道もどんどんいい方向に拓けてきました」という。2020年に全日本ブレイキン選手権で初優勝すると、同年のRed Bull BC One World Finalでは18歳で史上最年少優勝。高速でアクロバティックなパワームーブから一転、身体の動きをピタリと止めるフリーズに磨きをかけ、唯一無二のスタイルを作り上げてきた。

半井選手が考えるブレイキンの魅力とは…

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 そして今、パリオリンピック開催を翌年に控え、半井選手は再び金メダル候補としてスポットライトを浴びる。だが、そこにいるのは、人としてもダンサーとしても、大きく成長した21歳の青年だ。

「ブレイキンの魅力は、自分の個性や好み、自己満足を全開に出せるところ。だから、誰かの期待に応えようと人のためにやり始めると、自分中心ではなくなって踊っていてもしっくりこないし気持ちよくない。ダンスは自己表現だと言われますが、本当にその通りなんです。

 今の僕は踊っている時、自分のために頑張れている感覚があるし、ユースオリンピックの時よりも自分を持てている。もちろん今も自問自答が続くこともありますが、これも一つの勉強。もう大丈夫と思っていても、パリオリンピックに向けて注目度が上がり、期待やプレッシャーも増し、結局はすごく大変な状況になっているかもしれない。ただ、その瞬間瞬間で、しっかり状況と向き合いながら過ごせれば、結果や成長に繋がるんじゃないかと思っています」

 そう言ってニコリと見せた笑顔には大きな自信が浮かぶ。もう2度と、あの悔しさを味わいはしない。

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(前編はこちら)幼少期から養われた“世界を見る目” パリ期待の星を支える家族の絆

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半井 重幸なからい しげゆき

2002年3月11日、大阪府出身。姉の影響で7歳からブレイキンを始め、ダンサーネーム「Shigekix」として世界中で活躍する。小学生から海外の大会にも出場し、2014年には11歳でブレイキンの世界選手権「Chelles Battle Pro」のBaby Battle 1on1にて優勝。各地で開催される世界大会ではキッズ部門ばかりか、一般ソロ部門でも優勝を重ね、15歳だった2017年には最高峰とされる「Red Bull BC One World Final」に史上最年少出場を果たした。2018年にはブエノスアイレスユースオリンピックで銅メダルを獲得。2020年には「Red Bull BC One World Final」で史上最年少優勝を飾り、同年から全日本ブレイキン選手権で3連覇中。得意技は身体の動きを瞬時に静止するフリーズ。

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